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主食としての栗

読んだ。

俺はあまり深く考えずに文化史本を選んでいるのだが、たまには季節感のあるネタを選ぼうと思った。今から書くとしたら秋の味覚かなということで栗である。

俺にとって栗は嗜好品に近い。日常的に食べるものではなく、何かの機会にたまたま栗の入ったものを選ぶ。昔ながらの栗羊羹とか、ケーキでモンブランを選ぶとか。あとは季節限定なんとかで栗のやつを食べる。だいたいそんな感じだ。実家にいた時は栗ご飯や栗きんとんを食べたこともあるけれど、一人暮らししてからは覚えがない。

だが本書を始めとして栗に関する本を読むと、日本の歴史において栗が重要な地位を占めていたことに気がつく。文化的というのもあるが、そもそもとして栗は主食の地位にあったのだ。縄文時代の遺跡からは、栗をよく食べていた証拠が出てくる。

縄文時代の遺跡で行われた木炭分析の結果によると、縄文草創期から後期に至るまで、全ての時代で栗の木炭が検出されたという。調査された中で最も古い鳥浜貝塚は、14,000年前から6,000年前の遺跡である。対して日本の稲作の歴史は、早いところでも約3,000年前、本州北端まで伝わったのは約2,400年前だ。そう考えると日本では米が主食だった時期よりも栗が主食だった時期のほうが圧倒的に長い。

とはいえ、それは縄文時代の話であり、稲作が伝わった後は違うだろと思うかもしれない。確かに平野部では米に主食の地位を奪われたが、山間部では栗が米よりも入手しやすく、主食として食べられているのが昭和まで続いていた。

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