【書評】会って、話すこと。田中泰延著 No.9
【結論】
自分のことは話さないこと。相手のことを聞かないこと。相手は自分に興味などなく、自分も相手に興味などないのだから。それを前提としたほうが会話で苦しむことは少なくなる。
相手のことも、自分のことも話さず、「外部のこと」を話す。そのベースにあるものは「知識」であり、遠い日に仕入れていた知識が、誰かの記憶と響き合うからこそ、人間と人間はつながる。
現実世界に対する仮説を提示し、ボケにボケを重ね、会話を楽しむことこそ会話の醍醐味。ツッコミやオチ(結論)はいらない。会話にテクニックなど要らない。
会話で二人の外にあることを発見し、共有しよう。さすれば、誰かと会話を交わしたあとは、会話する前より幸せになるかもしれない。
【こんな人にオススメ】
◆ 自分のことをわかってもらおうとして苦しんでいる人 ◆ 他人のことをわかろうとして苦しんでいる人 ◆ 会話の意義や考え方について知りたい人
【著者の田中さんと私について】
田中泰延さん著、第2弾。田中さんの初書籍、「読みたいことを、書けばいい」を読んでみて、ビジネス書を読んで声を吹き出して笑ってしまった本は初めてであった。
不覚なことにファンとなってしまい、田中さんのツイッターもフォローしてしまった。そしたら田中さんの第2弾の著書が上梓されると知り、予約ボタンをポチッてしまった。しばらくして自宅ポストに投函されており、2日ばかしであっちゅう間に読破し、今こうしてアウトプットしているわけです。
【書評】
まず字が大きい!すぐに読める。読書を苦手としている人は、この本を読むといい。面白いし、すぐに読めるから、読破した!という達成感が比較的容易に得られます。
そして「会話術」というジャンルに入るこの本を上梓する前に、サラッと「40冊くらい会話の本を読んだ」と書いてあったのがスゴかった。いやいや40冊ですよ!1日1冊でも40日!
前著「読みたいことを、書けばいい」でも、「ライターは9割調べること」と主張されているように、本を書く前のリサーチ力が半端ない・・・。それをサラッと書いてしまうのがスゴイ。
そして既出の本の数々を「ほとんどテクニック論だ!会話はテクニックではない!」と思い切りディスっていて、既存の会話本の結論の逆のことを主張されているから面白すぎる。
また前著「読みたいことを、書けばいい」と対比させて書かれているように個人的には思った。
◆ 随筆を支えるもの ⇒ 事象 ◆ 会話を支えるもの ⇒ 知識
◆ あなたが書いてきた言葉が、今のあなたをここまで連れてきた ◆ あなたはあなたが発した言葉でできている
「書くこと」でも「話すこと」でも、自分や相手以外の「外」から出発している。そして自分の書いてきた言葉や発した言葉が今の私を私たらしめている、という考え方。
会話をするということは「傷つくこと」とハッキリ書いてあった。それは距離感を間違えたり、自分のことをわかってもらおうとして話したり、相手のことをわかろうとして話してしまうからであろう。そりゃあ至極当然で、僕も今までの人生でどれだけ距離感を間違え、会話によって傷つき、傷つけたことか!ハイ、完全に黒歴史です。
自分も経験してきているから、田中さんの主張される、「外」からスタートという考え方はストンと落ちたのです。自分と相手以外の「外」のこと、知識をベースにして会話をする。そして会話するときはギャラリーがいると思って会話をする。
そして私が最も日常生活でこれは大事!と思ったのは、ボケるということ!確かに、いつもボケている人って、不思議と機嫌がよいように見える!ボケをボケで切りかえせるくらいになりたいと思ったものです。だって不機嫌だと簡単に伝染するし、空気がおもくそ悪くなりますもんね。逆にボケをボケで返すと周りの雰囲気も明るくなる確率が高くなりますね。
そう、これは職場での私、って思いました。本にも思い切り書いてやりました。「これ、職場の私」と。
あなたにできる最も身近な社会貢献はよい言葉とよい笑顔である
うん、素敵。これは本当に肝に、心に、五臓六腑に染み渡らせよう。人からは確かに不機嫌に思われるよりは、こいつ頭おかしいんちゃう?と思われたほうがよいですわ。
【なぜ、人は会って話すのか】
前著でも、最後の方は「なぜ書くのか」であった。今回の本も「なぜ会って話すのか」というテーマで語られていた。この章は本当に深くて、正直今の私ではすべて理解できない。哲学的で温かく、やや抽象的で、何度も何度も読み返せるように書かれていると思う。
前著も合わせて、私はこの2冊を売らないでずっと手元に残していると思う。自分の人生の各ステージで最後の章は読み返したいから。たぶん見返すたびに「ああ、そういうことか」とどんどん新しい解釈ができるんじゃないかな。
【田中さんと今野さんについて】
この本の特徴の一つとして、田中さんと編集者である今野さんと、二人の実際の会話が収録されていることにある。その内容もまた結構面白く、お二人が披露する独特の考え方も僕にとっては新鮮であった。
何よりも、二人の間に流れる雰囲気がなんともいえないのが印象的であった。文面やほんの少しの写真しかないが、その距離感が絶妙だと感じる。二人の会話や写真を見て、こちらまでなぜか心温かくなる。(少なくとも僕はそう感じた)
お互いにボケたり、ディスり合っているように見えて、会話した後はちゃんとお互いに幸せになっているというか。最後のページの写真の二人の満面の笑顔は、このお二人の関係性をすべて物語っているように見えた。
うん、素敵なコンビだ。田中さん、今野さん、素敵な本をありがとうございました。
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