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Behind the Scenes of Honda F1 -ピット裏から見る景色- Vol.13

みなさん、こんにちは。フォトグラファーのアンディです。先週末のシンガポールGP、マックスの素晴らしい走りと、チームの戦略が見事にはまり、3位表彰台で終えることができましたね。

フォトグラファーの視点だと、シンガポールはナイトレースということもあり、美しい写真がたくさん撮れるという嬉しさもあるんです。腕の見せ所でもありますよね。さて、前回に引き続き、僕のF1でのキャリアについて語っていこうと思います。

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この世界では他人とは違う、自分のスタイルを確立することが求められます。多くのフォトグラファーが同じサーキットにいて、同じものを撮っていますし、自分自身も毎年同じ場所を訪れて同じようなマシンを撮るので、「人と違うことをする」というのは本当に難しいです。そのために色々なことを考えて実行に移すのですが、トラックウォークなどのリサーチはその基本となるので非常に大切です。

そして、「同じようなマシン」とはいったものの、実際に撮影をしていると、違いは色々あるんです。ディテールを見ればマシンも違うし、ドライバーも違う、そしてなにより状況によって光も違う。まったく同じと言うことはないんです。僕は「小さな変化が大きなアウトプットの違いになる」と思っているので、そういったディティールの違いを活かしてどうやって自分なりの写真に仕上げていくかかを、常に考えています。

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そばで見るF1マシンは本当に美しいんです。それがすごいスピードで駆け抜ける姿をどれだけカッコよくできるかと言うことだけにフォーカスしています。好きなものを撮っていると、もっと良くしたいというモチベーションは常に沸いてきます。昨年よりも今年、先週のレースよりも今週のレース、そして昨日よりも今日と言う感じで、もっといい写真を撮りたいといつも思っています。

あとは、これはフォトグラファーによりけりですが、僕自身は余計な編集をせずに撮ったものをそのまま使える写真というのも心がけています。デジタルフォトは色々なことが出来ますが、F1は自分がサーキットで撮影した写真がWi-Fiで飛び、その2分後にはSNSで使用される世界なので、そのあたりのスピードを考慮すると撮ったまま使用できるというのは僕たちの仕事に求められる要素の一つです。

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もう一つ、これは当たり前なんですが、きちんとそれぞれのサーキットの空気を伝えることもテーマですね。シンガポールはナイトレースの美しさでしたが、先日の2連戦のスパ、モンツァは、どちらも伝統のトラックで、特別な空気を感じます。ファンが熱狂的であることで有名なので、それを伝えることが僕の仕事です。

スパで言えば第二セクターにあるプーホン、モンツァで言えば最終コーナーのパラボリカが、スタンドにいるファンの空気感とともにマシンを撮影できるポイントです。特にパラボリカは撮影ゾーンがトラックに覆いかぶさるように設定されているので、撮っていて楽しいですね。どちらもマシンのスピードがとても速いので、リズムをつかむまでは少し時間がかかります。

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―僕にとってのベストドライバー

たくさんのレースを観てきましたが、好きなドライバーは誰かと聞かれたら、4人ほど名前を挙げると思います。小さい頃は、ジャン・アレジとミカ・ハッキネン。英語で”Under Dog”と言うんですが、速いのに1番手になりきれず最後には2番手で終わる感じが応援したくなるんです。プロになってからは、フェルナンド・アロンソとマックス・フェルスタッペン。2人とも実際にサーキットで写真を撮っていますが、ドライバーとして”パーフェクト”としか言いようがないですね。間違いなくスペシャルな2人です。

一方で、フォトグラファーとしてリスペクトしている人や、憧れの存在がいるかと問われると、特にいないかもしれません。プロがたくさんいる世界ですが、いつも彼らに負けないと言う気持ちでいつも写真を撮っています。

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―Honda F1とのかかわり

Hondaとはかれこれ5年間一緒に仕事をしていますが、自分のキャリアの中でもひとつのハイライトだと思っています。無限の時代も含めて、1990年代によくTVで見ていましたし、メンバーは本当にみんないい人ばかりです。

2015年の復帰の際は、F1で偉大な歴史を持つメーカーが戻ってきたこと自体が素晴らしいストーリーでしたし、そこに最初から関われたことを嬉しく思っています。とても厳しい時間を過ごした後に、積み重ねた苦労が報われる姿を見られるのは本当に素晴らしい経験でした。僕自身本当に嬉しかったですし、自分の写真を通して、その想いが伝わったんじゃないかなと思っています。

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今の僕に大きな課題があるとすれば、笑顔のタナベサンの写真を撮ることかもしれませんね(笑) 普段はにこやかなのですが、いざメディアやカメラの前にでるととても硬い顔になってしまうので、もしかしたら皆さんには実際のタナベサンとすこし違うイメージで伝わってしまっているかもしれません。

Hondaのサクセスストーリーはまだまだこんなもんじゃないと思っています。もっとたくさんの栄光の瞬間を、これからも皆さんに届けていきます!

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