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Behind the Scenes of Honda F1 -ピット裏から見る景色- Vol.21

皆さま、こんにちは。Honda F1テクニカルディレクターの田辺です。前回は、今シーズンを振り返りながら、自分が感じたことを語ってきましたが、後半では、F1での2シーズンを終えてみて思うことを話せればと思います。

―厳しいレースの世界、簡単には言葉を出せない

ちょうど2年前のこの時期に、私のテクニカルディレクターへの就任がアナウンスされたと記憶していますが、この話を初めて打診されたときは「にわかには信じられない」というのが正直な思いでした。インディカープロジェクトを継続するために、アメリカでのビザを延長したばかりのタイミングで、私としては全くの想定外でした。そして、外からF1プロジェクトを見ていて、非常に苦戦していたことはよく分かっていたので、本当に大変な仕事を任されてしまったという想いと同時に、自分のキャリアの集大成として大きな仕事になるとも感じました。当然のことながら、相当なプレッシャーを感じていました。

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私はHondaの中でも珍しく、自身のキャリアのほとんどをレースの世界で過ごしてきました。それだけにこの世界の厳しさをたくさん経験し、目にしてきたつもりです。今の私の仕事はエンジンから最大限のパフォーマンスを引き出すこと。しかし、信頼性の確保も忘れてはなりません。レースでは様々なことが起こり、自分のコントロール外のことが原因で苦しむこともしばしばあります。Honda F1を代表して皆さんにいろいろなことを伝えたいという思いはあるのですが、一方で、レースは簡単ではないですし、安易に結果にコミットできるような世界でもないとも思っています。

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私は普段、メディア上ではあまり多くを語らない人としてとらえられているかもしれませんが、どちらかというと「語らない」というよりは「そんなに簡単に語ることができない」と感じながら仕事をしていることを分かっていただけると、うれしく思います。

―開発現場とトラックサイドのメンバー全員に感謝

そんな中で、こんな自分を信じてついてきてくれたトラックサイドのメンバーには感謝していますし、なにより、開発責任者の浅木さんをはじめ、Sakuraやミルトン・キーンズで懸命に開発をプッシュしてくれたメンバーには、本当にありがとうという言葉を贈りたいです。

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この2年間、開発はほぼ計画通りに進み、現場でPUを走らせている立場としても明らかな進歩を感じていました。「計画通り」と簡単に言いますが、スケジュール通りにパフォーマンス向上を果たしていくことが、この世界ではどれだけ難しいことか、よく知っています。F1エンジンは、その時点での技術の粋を集め、「極限」までパフォーマンスを出しているものなので、その「極限」をコンスタントに更新し続けることは並大抵のものではありません。非常に心強い思いです。

ただ、もう一言加えねばなりません。「皆さん、来シーズンはすでに始まっています。さらなる前進を、一緒に果たしていきましょう」と。

―諸先輩方が紡いでくれた夢を、さらに次の世代へ

仕事としてレースをやりたい、いつかF1にチャレンジしたいという人は、Hondaの社内のみでなく、世の中にも恐らくたくさんいるのではないかと思います。そして、たとえ携われたとしても、サーキット現場に来られる人は限られています。サーキットでの仕事は精神的にも肉体的にも過酷なものです。色々と厳しい場面に立たされることもありますが、この場所で仕事ができることに対して、私はとても幸せを感じています。そして、この経験は私の人生の中で大きな財産になっていますので、この仕事を任せてもらったことにはとても感謝しています。

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我々がいま、F1というモータースポーツの頂点にチャレンジできるのは、創業者である本田宗一郎さんが大きな夢として挑み、その夢の続きを後藤治さん、木内健雄さん、中本修平さんなどの諸先輩方が紡いできてくれたおかげです。ですから、ここで終わらせるわけにはいきません。私には、浅木さんと一緒にこの夢を次の世代に引き継ぐという大きな責任があると思っています。

―ともに戦ったチームの素顔は

最後に、今年一緒に戦ってきた2つのチームについても触れたいと思います。

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まずはRed Bull Racing。外から見ていただいても分かるかもしれませんが、彼らについては「プロの職人集団」と表現するのが正しいかもしれません。どのメンバーも多くの経験を持ち、レースをよく知っています。そして、それぞれが自分の仕事に強い責任感を持ち、互いをリスペクトしながら仕事をしています。長く在籍しているメンバーが多く、それぞれがチームを愛している。一つの大きな家族のようなチームだという印象を持っています。代表のクリスティアン(ホーナー氏)とヘルムート・マルコさんが二人で時間をかけて作り上げてきたものですが、そこにHondaを信じ、その家族のメンバーであるかのように迎え入れてくれたことを本当にうれしく思っています。もちろん、今年サーキットで一緒に残してきたすばらしい成績については言うまでもありません。

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そして、もう一つのチームであるToro Rosso。こちらもまた、別の意味ですばらしい家族であると言えます。苦境にあった我々を温かく迎えてくれた彼らの存在なくしては、今年のここまでの飛躍はなかったと思っています。いつもサーキットではチームのメンバーが我々に日本語であいさつをしてくれて、それに我々が”Ciao”と返すといった感じです。イタリアのチームならではの陽気さと、(フランツ)トスト代表の我々に対する配慮からきているのかなと思っており、Red Bullとはまた異なる温かさを感じています。昨年から一緒にチャレンジを続けてきたパートナーですので、今年の2回の表彰台は初優勝とはまた別の意味で感極まるものがありましたし、昨年パートナーになれたのが彼らでよかったとも感じました。

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―来シーズンは「勝ちにこだわって結果を重ねる」

さて、今シーズンが終わったということでここまで長く書いてきました。
シーズンは終わりましたが、我々のチャレンジが終わったわけではありません。来年については今年の勢いを維持し、さらに勝ちにこだわって結果を重ねる年にしていきたいと思っています。そしてそのためには、もっともっと自分たちの仕事を厳しく見つめ直していかなくてはなりません。

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来年も、Honda一丸となって挑戦を続けていきます。引き続き、ご声援をよろしくお願いいたします。

それでは皆さま、少し早いですが、よいお年をお迎えください。

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Honda F1プロジェクトのメンバーが、レースの舞台裏で見たこと、感じたことをお伝えします。 公式Web→https://ja.hondaracingf1.com/ Twitter→https://twitter.com/HondaJP_Live

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