見出し画像

ライフスタイル提案の幕開け

栗原はるみ著
『ごちそうさまがききたくて。』1992年初版 文化出版局
『もう一度、ごちそうさまがききたくて。』1994年初版 文化出版局

 これらの本を最初に知ったのはテレビ番組『おそく起きた朝は…』で森尾由美さんが紹介した時です(何年かは不明だが、おそらく25年くらい前)。森尾由美さんが栗原さんのサインの入った『ごちそうさまがききたくて。』を嬉しそうに紹介していたので、もうこの時からすでに多くの女性の支持を集めていた本なのだと思います。番組では表紙とサインが入ったページのみ紹介されていましたが、ウチの実家にあるような料理の本とはまるで違う、雰囲気の良い表紙にぐっと引き込まれました。

 この2冊が私を料理本だけでなく、ライフスタイルというものを考えるきっかけにもなったのだと今になって思います。

 栗原さんの料理本のほとんどは自宅で撮影が行われ、いつも使われている食器やファブリックが小道具。普段づかい、かっこよすぎる。ライフスタイルのラの字も知らない十代の自分の目にはすこぶる魅力的に映りました。メインで使われているのは和食器で、細長い大皿、注ぎ口のある鉢、どっしりとした厚みの黒い皿……。実家では柄のある食器をメインで使っていたから、こういった和食器を使いこなす様はカッコイイとしか思えなかったです。

 料理のラインナップは、コーンドビーフやTボーンステーキなどのスケールの大きい西洋料理から、おなじみの乾物を使った和食まで、一冊のなかでも多岐にわたります。チャプチエや油淋鶏を知ったのもこの本でした。まだハーブ類が簡単に入手できなかった時代のことです。これら2冊の魅力は<へぇ~海外にはこんな料理があるのか!>という新しい発見と<これなら今晩の夕食に作れる>という実用性があることです。私は、日々の献立の参考にしながら、まだ知らぬ文化へのあこがれを抱く。この2冊のヒット後に栗原さんは大活躍をするわけですが、様々な文化と独自のセンスをMIXし紹介するスタイルは現在となっても面白く、飽きることはありません。

 さて、これらの本の出会いから四半世紀が経ち、今では自分さえ食べられれば良い謎の料理ばかり作っている私ですが、この2冊に掲載されている料理は結構実践しました。さばそぼろ(鶏そぼろよりあっさりしていて良い)、豚肉の梅肉蒸し、高菜チャーハン帽子のっけ、わかめ炒め、鮭の南蛮漬け、根三つ葉と豚肉の炒め物……料理に香味野菜を積極的に取り入れるのも自分の味覚に合っていました。当時まだお若い栗原さんの姿を見ると懐かしさも感じさせますが、今でも色あせない2冊です。



この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?