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カドブンでインタビュー記事を書かせていただいたので、追記します

まず前回記事でコロナかも、と書きましたが、扁桃腺炎でした。よかったです。ただ、薬を飲んで熱は下がったのですが、咳が止まりません。声も全くでません。完治するにはまだかかりそうです。

そして本題。カドブンのインタビュー記事でおすすめさせていただいた3作品の小説について、です。ミステリ3作、という要望だったのですが、ガン無視で自分の好きな小説3作を選びました。

どれも古い小説で、今は知っている人も少ないかと思いますので、追記という形で感想でも書いてみようかと思いました。
まずは『ビーチ』から。↑の画像は僕が持っている物なので、かなり年季が入っています。端っこがよれよれです。

著者はアレックス・ガーランド氏で、このビーチが処女作。

以下、訳者さんによるあらすじ紹介。

どこかにひっそりと存在している夢の島。ジャングルや岩壁に囲まれ、外界から隔絶した地上の楽園。そこでは選り抜きの旅人たちが小さな共同体をつくって暮らしている──
そんなうわさが、アジアを旅する若者たちのあいだに広まっていた。
バンコクに降りたったリチャードが向かったのはカオサン通り、バックパッカーなら知らない者はいないという旅の拠点だ。
ゲストハウスの隣の部屋には得体の知れない男が泊まっていた。スコットランド訛りのその男は、壁ごしにわけのわからないことを言いたて、なかなかリチャードを寝かそうとしない。
翌朝、その男は手首を切って自殺をするが、リチャードの部屋の扉には一枚の地図が貼りつけられていた。タイの南部に浮かぶ島々の一つにひとつに記された×印。そこにはこう書かれていた。
「ビーチ」


ストーリー自体はよくある冒険譚です。強烈なメッセージや斬新なテーマが込められているわけではありません。

では、この本の何がすごいって、圧倒的な没入感。
ガーランド氏の文章はそのままリチャードの日記・独白です。というかおそらく、ガーランド氏自身がバックパッカーとして世界を旅していた時期があるのでしょう。そのときに夢見た冒険が、このビーチなのでは。

リチャードが見ている物がそのまま見えてくる気がするほど、最初から没入感が高いです。一時期はこの文章のように一人称を書けないかと練習したこともあるのですが、とてもできませんでした。
よく「一人称小説は難しい」とは言われますが、それが成功するとこんな傑作の文章が生まれるんですよね。
ウィットに富んでいて、勢いがあり、リチャードの感情をあますことなく描き切っています。それでいて間延び一切なし。最高じゃないですか!

まるで自分がバックパッカーになって、異国の薄暗い路地裏を歩き、海を泳ぎ、美しく、しかし得体のしれないビーチにたどり着いたかのような気分に浸れます。
なのでこれは小説、というか、ある種の疑似体験装置なのかもしれません。

というわけで簡単ですが追記をしてみました。
ちなみにガーランド氏2作目の『テッセラクト』も読んだのですが、そちらは普通につまらなかったです。



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