ブラジル音楽ファン以外にもDeangelo Silvaの新譜”Hangout”を聴いてほしい!

こんにちは。打楽器奏者の木川保奈美です。

最近、友達のブラジル人ピアニストDeangelo Silva(ディアンジェロ・シルヴァ)が新譜の日本盤をリリースしたので紹介させてください。

彼はブラジルの内陸部ミナスジェライス州を中心に活動しています。
キャリアとしては同じミナス出身の有名ミュージシャン、トニーニョ・オルタのバンドメンバーとして活動していたり、またアミルトン・ゴドイやフィロー・マシャード等の著名なアーティストとの共演歴もあるなど、MPBやブラジルジャズの第一線で活躍する若手の一人です。

音楽のカテゴリ的には、いわゆる典型的なサンバジャズやMPBとはまた違って、伝統的なブラジル音楽の要素を残しつつも、電子音楽を主体としており、フュージョンや中東のジャズの影響も受けています。
ミナスジェライスにこのような音楽形態の若手ミュージシャンが多いことから、日本ではこの界隈を「ミナス新世代」と呼び、今回の日本盤は彼もその一員として売り出されているので、そちら方面に敏感な音楽ファンの方には本作を既に広く知られている印象です。

ですが、日頃から彼の日本デビューへの思いを聞いていたファンであり一友人として、既存のブラジル音楽ファン、ミナス新世代ファンだけにとどまらず、新しい音楽に対して好奇心のある全ての日本の皆さんに彼の作品を聴いてほしいなと思いました。


特にパッと思いつくのだと、パット・メセニー、ウェザー・リポート、イエロージャケッツ、エルメート・パスコアール、アジムス、アヴィシャイ・コーエン、ティグラン・ハマシアン辺り好きな人は刺さるかもしれないので、読み進めてください。
あとブラッド・メルドー(ディアンジェロは彼の大ファンでめっちゃ影響受けてるそうです。私はあまり詳しくないので逆におすすめあったら教えてほしいです!)

アルバム内の何曲かについて感想を書いたので、参考にしていただけたら嬉しいです!
上記の通りサブスクも解禁済みですが、CDだとボーナストラックがある上に解説もついているので、よりおすすめです。

”Berlin”
冒頭「これがブラジル作品?」と首を傾げるようなアーバンな展開。
しかし何重にも覆い被さったフュージョンの毛布がバッと剥がれた1:53でテレコ・テコ(ラテンでいうクラーベ的なリズムパターン)が現れて鳥肌!
ブラジルのグルーヴは始めからずっと「そこにいた」のだと2回目に聴いた時に気づいた…ひええ天才。
3:00からのピアノソロ裏もスペイシーな雰囲気だけど根底にずっと北東部のノリが隠されている。
伏線回収を辿るため何度でも聞き返したい一曲。

”Jack Herer”
欧米の影響濃いゴリゴリのフュージョンサウンドに、北東部のリズム「マラカトゥ」を3拍子にアレンジした強いグルーヴが合わさる。
サウンドデザインとして参加しているFred Selvaによるボイスサンプリングがタイトルの世界観を表していて秀逸!
タイトルの意味はちょっぴりセンシティブ?なのでググっていただきたい(笑)
本アルバムにはドラマーとしてAntonio Loureiroが参加していることもあり、より「ミナス新世代」界隈が好きな方の興味をそそったと思うのだが、Fred Selvaもぜひチェックしてほしい。
ヴィブラフォン奏者でありDTMerで、この界隈の中でも飛び抜けた実験音楽的要素を持つので、ちょっと尖ったのが聞きたい方にはぴったり…おっと話がそれた。

”My New Old Friends”
こちらもサンバジャズのグルーヴをタイトにエレクトリックに昇華させることでより締まった印象に。
高速でテクニカルな楽曲なのでライブでメンバーの技術を観てみたいなあ…
今回のバンドメンバーとは旧知の友であるにも関わらず、長い間レコーディングをしてこなかったそうで、改めて一緒に音作りをすることで、新たな友情を表現した曲だという。
前述のFred SelvaやAntonio Loureiroをはじめ、ギターのFelipe Vilas BoasやベースのFrederico Heliodoroなど、メンバー全員がミナスの若手凄腕ミュージシャンでそれぞれがソロ作品を発表しているので、本作が気に入った方はぜひチェックしてほしい。

“Astronaut to D Mix 2”
こちらはCD限定のボーナストラック。
ここまで激しい楽曲続きだったが、重たいスローサンバのリズムがチルアウトさせてくれる。
ブラジル音楽とはかけ離れていそうで、どの曲にもブラジルのグルーヴが取り入れられているのはさすが。
一聴すると頭を使いそうな小難しいフュージョンでも、テーマやソロのとり方がしっかりメロディアスなのはいかにもピアニストらしい。

いかがでしたか?
ディアンジェロのアルバムが日本で人気になって、コロナ禍が終わったら来日ツアーができるようになることを願っています。
「あなたの新譜、日本で話題になっているよ!」と教えたら、とても喜んで「ディアンジェロ」か「ハングアウト」ってカタカナでタトゥー入れようかな!と言っていました(笑)
ぜひたくさん聞いて、CDも買ってくれたら嬉しいです。

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