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無闇なポジティブと上昇志向を手放す

ポジティブとネガティブは、右のタイヤと左のタイヤみたいな関係にあるんじゃないかと思います。

ポジティブだけが動いていても、ぐるぐるその場を回るだけという意味で。

新卒1年目から2年目くらいの時期、やたらポジティブな本ばかり読んでいました。役に立ったことも多かったけれど、自己催眠をかけていた節がある。

物事を直視する力って生まれつき持ってる人と持ってない人がいるみたいです。私は後者で、24歳くらいまで、地に足つかない理想論やポジティブ論を本気で信じていました。

ここ最近考えが変わり、無闇なポジティブも上昇志向も手放しつつあります。読んだ本を振り替えってみると特に2021年の上半期は、過渡期だったように思う。

(このnoteは毎日のお風呂読書の記録です。1から読んでくださる方はこちら。)

31 『僕の人生には事件が起きない』 岩井勇気

僕の人生には事件が起きない

僕の人生には事件が起きない 岩井勇気

僕の人生には事件が起きない。が、それと同じように皆さんの人生にもそんなに事件は起きていない。そして、テレビで見る芸能人の人生にもどうせ本当は事件など起きていないだろうと。それを皆、化学調味料で元の味などわからなくなるくらい噓のように濃い味付けにして提供してくるのだ。そんなものばかり食べていると、そのうち舌が馬鹿になる。物の味なんてわからなくなってしまう。

岩井勇気. 僕の人生には事件が起きない (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1724-1728). Kindle 版. 

ハライチの岩井さんのエッセイで、タイトルの通りの日常を、視点の転換によって面白く紹介している。お気に入りは、「あんかけラーメンの汁を持ち歩くと」のお話。

このエッセイを読んでいて思ったのだけど、普通に暮らしている一般人でも、切り抜いて言葉にすると面白い行動理念を持っていることがある。

身近にあった例だと、コンタクトの右用レンズが破れたら、数を合わせるために未開封の左用レンズを1枚捨てるとか。リプトンの青いミルクティーを飲んでいる男性が苦手って人もいた。

本人にとっては無意識の習慣だけど、何かのきっかけで話題に出してみた瞬間に誰かが「なにそれ」って深堀りだし、原石がゴシゴシ磨かれてその場の主役になったりする。

学生の頃の昼休み、こういう流れで何度お腹が痛くなるくらい笑っただろう。大人になってからないなぁ。いろんな人から引き出してみようかな。

32 『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』 岡田斗司夫

ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く  

ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く 岡田斗司夫

僕ら人間の8割は、バカです。これは2割賢い人がいて、残りの8割がバカだということではありません。僕らの心の8割はバカでできている、という意味です。僕も1日のうち1、2時間くらい頭のよさげなことを考えたりすることもありますが、食べ物の誘惑に負けて思いっきりリバウンドしてしまったりする。ちゃんと自分たちがバカだと忘れずに生きていくことが本当は一番大事なんでしょうけど、人間はなかなかそうできません。

岡田 斗司夫. ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1784-1788). Kindle 版. 

YouTuberの消滅を心配しているわけではなく、岡田斗司夫目当てで読んだ。アニメ解説で有名なオタキングの新書。

YouTubeのメンバーシップで「岡田斗司夫ゼミ」というコーナーをやっている通り、なんだか大学のゼミっぽい。読者を説得する本ではなく、考えさせる本だなと思う。

岡田斗司夫はIQ148の天才で、小さな頃から成績優秀だったそう。周囲より並外れて賢く生まれて、どうしてこんなに人当たりよく、誰でも理解できる話し方ができるんだろうと疑問だった。

「頭脳と対人スキルが両立してるなんてずるすぎる」と若い頃の動画を探して見てみたら、今より言葉もしゃべり方も鋭く血の気が多い感じがして、ああ世の中との折り合いを後天的に身につけたタイプの天才かと都合よく納得した。

この本はタイトル通り「未来」の話。データとAIが予測した未来より、岡田斗司夫の読み解く未来の方が面白い。さらに言うと、自分で世の中を観察して予測する未来の方がずっと面白い。

これは、明るい未来を好きに想像できるからってわけじゃない。明るい暗い関係なく、自分が生きる時代を正面から味わっているから面白いんだと思う。

33 『夢の叶え方を知っていますか?』 森 博嗣

夢の叶え方を知っていますか?

夢の叶え方を知っていますか? 森 博嗣

「夢」というのは、自分の自由の追求である。しかし、それははたして、自分が「見たい夢」なのか、それとも人に「見せたい夢」なのか、一度じっくりと考えてみることをおすすめする。

森博嗣. 夢の叶え方を知っていますか? (Japanese Edition) (Kindle の位置No.358-360). Kindle 版. 

5月に、『スカイ・クロラ』のアニメ映画をプライムで見た。中学生のときに小説を読み、大学生の時にアニメ映画を見たので、このお話をなぞるのは3回目だった。

なんだかやっと映画の意味がわかった気がして、ふと作者の森博嗣に興味が湧いてきた。kindleでエッセイを3冊買って、最初に読んだのがこの本。

「知っていますか?」だなんて優しいタイトルだけど、中身は割とピシャリとしている。森博嗣のエッセイは全部そうかもしれない。

子供の頃の夢をひとつずつ実現していくことが人生であり、夢を思い出したら誠実に応える。

ライフステージだとか生涯賃金だとかを示したグラフで、人生が左から右への直線で示されていることがよくある。時間の流れは確かに一方向だけど、精神の具合はどうも違うんだろうな。子供の頃が中心にあって、大人の自分はキャンプファイヤーみたいにその周りをぐるっと囲み、真ん中の子供をじーっと見つめている。

子供じゃなくなったとたん、子供の頃の自分がわからなくなる。記憶はあっても感覚は戻らない。輪の中心で遊んでいる子供時代の自分を見て、「どうして自分が何者かわかっていたんだ?」「この自分の大切なものはなんだったんだ?」と不思議に思う。

そしてあの手この手で、自分が本当にやりたかったことを思い出し叶えてみる。

どうも、二度手間感があるなぁ。やっぱり人間ってあまり頭が良くないんだろう。

34 『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』 橘玲

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 橘玲

ぼくたちは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない。

橘玲. 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2316-2317). Kindle 版.

2つ前に紹介した岡田斗司夫が話題にしていたので読んだ。世界は残酷だけれど、人間の勝手な幻想が世界を残酷に見せているのかもしれない。

私たちの現実には、「建前」という歪な蓋がされている。その蓋の隙間から見える暗いところについて、話題にするのはタブーになっている。

そもそも、「建前」の蓋さえなければ、現実は暗くも明るくもなく、ただの現実でしかない。

アニメ『サイコパス』が好きな人は好きなんじゃないかと思う。「将来犯罪を犯す確率がすごく高い人」は存在する。そういう人を可視化することは残酷なのか?

残酷だと感じるのは、子供はみんな天使だとか、犯罪者はどこか他所からやってくるだとか、現実逃避をしているからなのかも。「犯罪を犯す可能性が高い人間は一定の割合でどこでも生まれる」という現実をそのまま飲み込んでいれば、サイコパス係数が高い人間が存在するのは悲劇でもなんでもない。

残酷な現実を直視することは、悲劇の発見を減らすことにつながる。この本を読んで、初めて降りてきた考え方だった。

35 『負ける技術』 カレー沢薫

負ける技術

負ける技術 カレー沢薫

せっかく血のにじむような努力をして勝利をつかんだのに、全然威張れない。ならば勝利の意味とはいったいなんであろうか。つまり、成功や勝利など、すくわれる足が増えたに過ぎないのである。そういった意味では自分は完全に空中浮遊状態で、すくわれる余地はない。

カレー沢薫. 負ける技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.451-453). Kindle 版. 

ガラッと毛色が変わるのだけど、お風呂でケタケタ笑ったカレー沢薫のエッセイ本。

『負ける技術』というとビジネス本っぽいけれど、技術が体系立てて書かれているのではなく、とにかく卑屈で笑える(褒め言葉)お話集だ。お気に入りは「ある日、正装で」と「ファッションセンス」。

私がこの本を何度も読み返しているのだけど、その理由は本文のここに詰まっている。

こと日本においては「負けてみせる」というのは確かに大切なことである。たとえば接待ゴルフに行ったとして、取引先のお偉い様に賭けゴルフをふっかけてゲーマン(5万円)巻き上げたり、いじめられてる小学生みたいにゴルフバッグを5個持たすとかはしないはずである。上手く負けて花をもたせるはずだ。

カレー沢薫. 負ける技術 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.443-446). Kindle 版. 

お偉いさまに賭けゴルフを〜のくだり。この部分だけは他人事と思えなくて笑えなかった。私は物心ついたときから負けず嫌いで、上手く負けて花を持たせるなんて芸当、生まれ変わらなきゃ身につかなそうだ。

上手く負けるくらいなら、私は取引先のお偉い様より偉くなってやります!と実家の仏壇に誓ってしまうと思う。

この激しい負けず嫌いが「誰にも負けない!頑張ればなんでもできる!」の病的ポジティブに進化し、体がついていけなくなったのが24歳頃。

ポジティブもネガティブもこちらの解釈で、現実はただ現実なのだと思えるようになった。27歳、今ここって感じである。

今世でバランス感覚が身に付くイメージがない

電撃イライラ棒というゲームがある。銀色のコースの中に金属の棒を入れ、コースに触れないようにゴールまで金属棒を移動させれば成功。コースに触れると電流が流れるんだったか、爆発するんだったか。

要は、コースの真ん中を通るバランス力があれば勝てる。現実にもいるよね、器用に中庸を行く、バランス感覚のある人。

この手のスキルが、私はごそっと抜け落ちている。波があって、考え方も極端だと思う。電撃イライラ棒で言ったら、真ん中に居られずコースにぶつかりまくってとっくにゲームオーバーだ。ゲームだったらそこで終わるのだけど、躁になっても鬱になっても人生は続いた。

上振れして電撃が走って、下振れして電撃が走って、やっと真っ直ぐ世界と自分を見られるようになった気がする。


さて、現実直視と言いながら、最近ハマっているのはSF小説で、ハインラインの『夏への扉』を読んでいる。次のnoteはSFまとめになるかも。

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