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核はなぜ二重の膜で覆われるようになったのか?
核を覆う膜(核膜)がなぜ二重の膜になっているかが不思議だと、以前書いた。
地球上には核がない原核生物と、核がある真核生物がいる。
真核生物は、核のない原核生物(バクテリア)から進化し、核を持つようになった。
真核生物が、原核生物から真核生物に進化しつつあるその過程で、核はどのようにしてできたんだろうか?
まず、細胞膜のような脂質二重膜は、リン脂質がこう二層に並んでできている。
この脂質二重膜は、水中で自然に袋になる。
これが、細胞の一番外側。
命のイレモノだ。
僕たちのゲノムDNAを包んでいる核膜は、なぜかこの脂質二重膜が二重になっている。
なんで二重になったのか?
考えてみると、脂質二重膜を二重にする方法は2とおりありそうだ。
ひとつは以前書いた、ミトコンドリアや葉緑体のパターン。
つまり、細胞の外から、別の細胞が入り込んで来て・・・
入り込んで来た方の細胞が、二重の脂質二重膜で覆われることになる。
もうひとつは、
小さい脂質二重膜の袋が、ある程度の密度で集まると、
となり合った袋と袋が、くっつき始める。
イメージとしては、ラーメンのスープに浮いた油の丸い集まりを、箸の先でいじってくっつけていくような、あの感じだ。
でも、何もないところに小さい袋が密集しても、不規則にくっつき合って何のパターンもできそうにない。
そこで、中心に「なにか」があって、その周りに袋が密集したとすると、どうだろう?
こんな感じで、なにかの周りで袋がくっつき合って・・・
なにかの周りを、二重の脂質二重膜が包むことになる。
この「なにか」を、今まさに進化しつつあるという段階の、原初の真核細胞の「ゲノムDNA」だったと考えると・・・
こうやって、ゲノムDNAの周りを、二重の脂質二重膜が包むことになって、これが核膜の原型になったんじゃなかろうか?!っていう仮説がある。
この考え方だと、核膜に「核膜孔(かくまくこう)」という穴が開いている理由も、自然に理解できる。
つまり、カタチの面から考えると、とても自然な仮説だと思う。
カタチを考えるのが好きな僕は、この仮説をとても気に入っている。
ただ、こう考えると、
「じゃあなんで、ゲノムDNAの周りに脂質二重膜の袋がたくさん密集したんだろう?」
っていうのが次の疑問だ。
これについても、とてもおもしろい仮説がある。
もう一度、「今まさに真核細胞ができつつある時期」に立ち返って見てみよう。
真核細胞の元となったバクテリアに、ミトコンドリアの元となったバクテリアが侵入して、寄生した。
寄生したバクテリア(寄生体)は、寄生された細胞(宿主)の中で増えていく。そして当然、死んでいくものも出てくる。死んだバクテリアの中からはゲノムDNAが出てきてしまう。
この時期にはまだ、宿主となった細胞にも核はないから、
死んだ寄生体のゲノムDNA
宿主細胞のゲノムDNA
が、両方ともむき出しのまま、触れ合うことになった。
むき出しのまま触れ合うので、寄生体のゲノムDNAの遺伝子が、宿主細胞のゲノムDNAに、どんどん移動していったというんだ。
これはとても危険なことだ。
細胞の中ではふつう、どの遺伝子が、いつ、どれぐらい働くべきかが、ものすごく厳密にコントロールされてる。
あらゆる遺伝子には、その遺伝子の働きを促したり抑えたりする複数の遺伝子が必ず関わっている。
だから、ふつうは寄生体の遺伝子も、寄生体の他のいくつかの遺伝子によって、働きがきっちりコントロールされてる。
でも、そんな寄生体の遺伝子が、いきなり宿主細胞のゲノムに移動してきちゃったら、どうなるだろう?
そんな、よそ者の遺伝子をコントロールする遺伝子なんて、宿主細胞はその時点では持ってなかったはずだ。
だから、寄生体から移動してきた「よそ者遺伝子」は暴れたい放題!
遺伝子がつねにめいっぱい働いている状態になりかねないのだ。
そんなふうに、寄生体から宿主細胞のゲノムに移動してきた遺伝子のひとつに、リン脂質を合成する酵素の遺伝子もあっただろう。
すると、宿主細胞のゲノムDNAの周りで、この遺伝子が暴走して、リン脂質を合成する酵素を作りまくり、酵素はリン脂質を作りまくる。
すると・・・?
ゲノムDNAの周りに、脂質二重膜の袋がいっぱいできて、ゲノムDNAを取り囲むことになる。
この袋は
互いにくっつき合って・・・
二重の脂質二重膜になり・・・
これが核膜の原型になったんじゃなかろうか??
というわけだ!
核膜がどうやってできたかについての、現在の仮説は(異説もあるにせよ)大まかにはこんな感じのストーリーだ。
奇跡のようなストーリーだ。
核膜を持つことに何か大きなメリットがないと、こんなストーリーはうまく説明できない。
そしてメリットはあったと考えられてるんだけど、そこまではなかなか書ききれないので、今回はこのぐらいにしておきます。
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