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コスメ全くわからんから、読んでみた『TOKIMAKE』【文学フリマ東京38】

推しコスメ全部調べてみました。

……

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どれを、どうやって使うんですか……?




こんにちは佐藤僚太です。


『TOKIMAKE』を読む前に2つ考えていたことがありました。

コスメ知らなくて読めるのでしょうか?著者の方が毎日のように使っている言葉を僕は多分知らないです。ストーリーの中でそれが登場しても、想像することさえ出来ないかもしれません。例えると、いきなり『G♯dim』とか言われる感じでしょうか。

またこのジャンルの小説が僕に合うのかがわからない。僕が好きな小説はミステリーやサスペンスなど暗くて緊張感のあるような小説です。密室で次々と人が死んでいくような展開は、出てこないだろうと思ってました。


結論

え、めっちゃ面白いじゃん!



セットリスト

かさね塗り  真下みことさん
紅化粧奇譚  中野伶理さん
貴様をまつげで刺突する  実石沙枝子さん
魔法はいらない  松本あずさ
コスメ取物語  じゅりあさん
サンゴ色の時間  揚羽はなさん
拭った雪から紫が咲く 草花セレさん
いたづらにまとうかおりは  まだりんさん
鏡の中の人生  甘木零さん
鎧と薔薇  菅浩江さん

TOKIMAKE コスメアンソロジー

順番に感想を書いていきます。



かさね塗り  真下みことさん

真下みことさんの作品は他にも読んでいたので、物語に入っていきやすかったです。花言葉は好きで調べていた時期があったので、コスメがちょっとだけ身近に感じました。花そのものを贈る時以外にも花言葉は使えるんだと気づきました。花言葉みたいに、隠されたメッセージがあるというのは魅力的だと思います。


紅化粧奇譚  中野伶理さん

最初に感じたのは主人公はそっちなんだという驚きです。通常だったら違う時代に行ける青年の方が主人公になっていることが多いように感じます。『タイムトラベル』という表現が適切かはわかりませんが。タイムトラベルをした先の場所にいる人の心情を描いているのが新しくていいなと思いました。


貴様をまつげで刺突する  実石沙枝子さん

最初の2行から最高です。コスメアンソロジーにこういう物語が入るのは想像してませんでした。「悪に向けてウインクする」のこの「悪」っていうのは主観でしょうか?だとしたら全員刺突される可能性はあるなと考えました。最後は鏡に向かって刺突するのかと想像しましたが、そうはならなかったようです。他の作品も気になるので、読んでみたいと思います。


魔法はいらない  松本あずさ

主人公はあきらめる癖がついたと思っていても、内心は「変わりたい」という気持ちはずっとあったんだろうなと感じました。そしてそのことを口にだして言う「勇気」と「行動」が少しずつ人生を変えていくんだろうなと思います。僕も少しずつでいいから行動していきたいです。


コスメ取物語  じゅりあさん

イラスト!アンソロジーってこういう楽しみ方もあるんだと思いました。イラストが描けるっていうのは、憧れます。高校からの友人にイラストを趣味で描いてる人がいるんですが、イラストが描けると創作の範囲が広がっていいなと思ってます。推しはピューマみみの姫。


サンゴ色の時間  揚羽はなさん

鏡の中で成長を見ているのに伝えられないもどかしさを感じました。主人公の前に母は実在してなくても、心の中ではずっと一緒にいたんだろうなと感じます。終わり方は、なるほどと思って、すごく好みです。


拭った雪から紫が咲く 草花セレさん

主人公の姉は死が迫ることが怖いのか、頬花の抜かれた後の顔を見せることが怖いのか考えました。もし頬花が命には影響せず、見た目だけに影響するものだけだったら、どのような話になったのだろうかと想像してみたりしました。読み終わってからのタイトルが秀逸でした。


いたづらにまとうかおりは  まだりんさん

「好き」と「似合う」というものをテーマにしたのかなと感じます。僕は個人的に「目的」によって使いわければいいんじゃないのかなと思いました。ただその中でもやってみたい、試してみたいっていう自分の中から出てくる気持ちは貴重だと思うので大切にしたいと思ってます。

鏡の中の人生  甘木零さん

「鏡の中の望んだ顔を~」という文章にハッとしました。確かに鏡を見ないと自分はどのような顔をしているのかがわかりません。メイクによって変わっていく様子と感情を鋭く描写した文章だなと思いました。最後の少し怖いようなドキッとさせる表現も好みでした。


鎧と薔薇  菅浩江さん

感情が表情に出てくるというところは身に覚えがあります。主人公の立場は僕が就職活動の面接で何回も落ちた時のことを思いだしました。主人公が顧客と正対できるようになったように、自分のふるまいに余裕がでてくるのなら<カラフル・アーマー>を試してみたいとも思いました。



全体の感想

想像していたより気持ちを揺さぶるような描写が多く、シリアスな話が多かった印象です。コスメに関して、名前がわからないという理由でストーリーが全くわからなくなるということはありませんでした。普段使っている人だったら、僕がイメージした情景より解像度が上がると思うのでより楽しめると思います。また、全く知らない範囲のものを新しく読んでみるのもいいなと、今回『TOKIMAKE コスメアンソロジー』を読んでみて感じました。なので僕のように「コスメ全くわからん!」っていう人にもオススメです。


真下みことさんにサインを入れて頂きました。 ありがとうございます!



『TOKIMAKE コスメアンソロジー』の感想は以上になります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

佐藤僚太





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