「熱海殺人事件」
今でも思い出す
つかこうへいの舞台。
新宿紀伊國屋ホール。
大音量の「白鳥の湖」と
眩しいほどの照明。
厚化粧の役者たち。
演目は「熱海殺人事件」。
木村伝兵衛部長刑事は
三浦洋一だった。
新任刑事は平田満、
未熟な犯人は加藤健一、
ハナ子は井上加奈子だった。
がなりたてる話しぶりや
相手を大声で罵倒したり、
花束で打ち据えるシーンなど
強烈な演出に度肝を抜かれ、
心臓をえぐられ圧倒された。
授業をサボって観に行った。
圧巻はスピーディな台詞回し。
超高速の長台詞が延々と
役者が変わって押し寄せる。
いつつかえるかと思いつつ
破綻するぎりぎりで行使され、
そのスリルに酔いしれた。
つかこうへいは言っている。
「客はF1レースを見に来ている。
いつ事故が起きてもおかしくない
超高速の台詞と激しいバトル。
ヘアピンカーブを高速で抜ける
台詞回しの巧みさに舌を巻くのだ」
あのときの昂奮を味わいたい。
つかこうへいは死んだけれど、
彼の意志を継ぐ者がいまも
超高速の舞台を作って欲しい!