『幽霊たち』

ブルー、ホワイト、ブラック。
ポール・オースターの小説、
『幽霊たち』の登場人物の名前。
でも、ただ人を色分けしただけで、
本当の名前とはとても思えない。

読み進めていくうちに
本当の名前のように思えてくる。
しかし人物像があまりに曖昧で、
とても実在しているとは思えない。
小説だからいいのだろう。

物語も奇っ怪であり、
場所も不特定である。
現実のようで現実ではなく、
嘘のようで嘘でもない。
でも、やはり虚構なのだろう。

だから登場人物たちは
みな、幽霊のようなのだ。
色の名のついた人物たちが
色褪せてゆき、
透明人間になって行く。

何とも言えない不思議な世界。
生きているのに幽霊のよう。
まさにタイトル通りの物語。
それがポール・オースターの
個性溢れる小説なのだろう。