「クノプフ・ゼメル」

那須の美味しいパン屋さん、
クローチェのマダムが
「ちょっと作ってみたの」と
丸い小さなパンを持ってきた。

パパさんもにっこり笑って言う。
「最近食べたパンで最も美味しい」
ドイツの家庭パンなのだけど、
イタリアパンに似ているという。

パンの名前は「クノプフ・センメル」。
日本ではこう読んでいるようだが、
ドイツ人がこのパンを発音すれば
「クノプフ・ゼメル」となるようだ。

綴りは「KNOPF SEMMEL」。
KNOPFは衣服のボタンのこと。
SEMMMELはロールのこと。
ボタン型のロールパンである。

小さいけれどしっかりしていて
やや硬くて噛みごたえがある。
小麦の味が口の中に広がり、
まったくもって僕好みのパン。

いくつかに小さくちぎって
ウォシュタイプのチーズを塗る。
赤ワインを飲みつつ食べる。
他に何もいらないくらい美味い。

本当はラインやモーゼルの
白ワインならさらにいいだろう。
緑に溢れた那須の山を見ながら、
「クノプス・ゼメル」を味わう。
これだけで至福のひとときになる。