子供の頃の冬

寒い寒いと言うが

僕が子供の頃の東京は

今とは比べものに

ならないくらい寒かった。


小学校へ行く道は

コンクリートじゃなくて土。

冬は霜柱が立って、

踏んで歩くのが楽しかった。


でも靴の中の足は冷たく、

朝起きたら靴下を

ストーブにぶら下げておき、

火が付いて慌てることもあった。


小学校のストーブは

石炭コークスのダルマ型。

ストーブ係はかじかむ手で

火を熾しておくのだった。


高校時代はストーブの上で

弁当を温めるヤツがいた。

今や整形外科医となった

Kというハンサムなヤツだ。


冷たい弁当は旨くない。

俺だって温めたかったが、

Kがニコニコ笑ってお先にと

自分の弁当を乗せてしまうのだ。


今は寒いと言っても

暖房を切るくらいだ。

地球温暖化のせいだろうが、

暖かいからいいってわけじゃない。


子供の頃の寒さが懐かしい。

火のあるストーブが恋しい。

冬がうんと寒かったからか

人々の心はうんと温かかった。