ルシア・ベルリンの小説
『掃除婦のための手引き書』、
“A Manual for Cleaning Woman”。
ルシア・ベルリンの書である。
日本語に優れた岸本佐和子の
翻訳ということで読むことにした。
最初はアル中の話ばかりで
何でこんな本が面白いのかと
不思議にさえ感じたのだが、
読み進むうちに心に湧き出る
ざわざわが止まらなくなった。
それは著者のざわめきや、
淀みと純粋さの混沌、
視覚や聴覚、触覚など、
五感の相互乗り入れが
読み手に伝わってくるからだ。
短篇の集まりなのに、
それぞれの話が繫がっていて、
妙な味わいになる。
読み終わってみて
途方もないため息が出た。
優しさの深淵に出会ったからだ。