あの子は元気でいるだろうか?
あの子は元気にしているのだろうか?
僕たちのいた病室のトイ面の個室にいた子。
彼はいつもその間の面会エリアで遊んでいた。
机や椅子をどけてお母さんやリハビリ師とともに
サッカーやキャッチボールやピンポンをやっていた。
ギャアギャア大声を発して騒がしくやっていた。
ちょっとうるさいなと思って覗いてみると
彼の頭にはカポッと割った跡が残っていた。
頭を一周する手術痕に髪の毛が生えていなかった。
脳腫瘍など大きな病気の手術したに違いないのだった。
いつの日だったか、お父さんがやってきた。
お母さんは慌ただしく彼に着替えをさせ、
病室にあったいろいろな物を抱えて去っていった。
全快したのなら本当にいいのだけれどと僕は思った。
その日からうるさかった彼の声は聞こえずに寂しくなった。
あの子は今も元気にしているだろうか?
僕が退院したあとに、舞い戻ってはいないだろうか?
僕だってもちろん、病室なんかに戻りたくない。
入院した病人はみんな同じことを思っているのだ。
だから、彼も戻ってきてはいないことを祈る。
頭を一周していた手術痕にも髪の毛が生え、
ぎゃあぎゃあと大声で友達と遊んでいて欲しい。
眩しい太陽の下で思い切り遊んでいることを願う。
おかあさんもおとうさんも笑顔でいて欲しい。
君のことは僕のことのように思えてしまうからだ。