賢く見せる法

18世紀フランスの哲学者

ジャン・ジャック・ルソーの

大ベストセラーである

「ヌーヴェル・エロイーズ」。

書簡体の恋愛長編小説には

ルソーの自然回帰による

人間性の回復が謳われている。


「あるものを否定し、

ないものを説明する」。

これはこの小説にある言葉だ。

僕がこの言葉を知ったとき、

若い頃に頭がよいと思えた

友人たちのこと想起させた。

賢く見せる方法だったのだなと。


何かのテーマを話していたとき、

先ずはそのテーマを否定し、

その後に違うテーマで説明する。

そうすると誰もが驚き納得し、

それを行った友人は誰からも

頭が良いようにも思われるのだ。

しかしそれはレトリックでしかない。


ルソーは人間という生物は

進化するにつれて知恵を付け

それによって社会性を持つことで

原始的時代には自然に持っていた

自由と平等を無くしたと説いた。

人間が求めた富によって退廃や

紛争が巻き起こったと述べたのだ。


僕はルソーの言葉に相づちを打つ。

もっと純粋に自然に暮らしたらいい。

心に愛が芽生えれば恋すれば良いし、

思うがままに楽しく生きればいい。

決して他人に賢く見せることはなく、

己を愚者と思って学んでいけばいい。

まさに「自然に帰れ」と思ったのだ。


とはいえ、一生に一度は自分を

賢く見せたいと思うならば、

「あるものを否定し、

ないものを説明する」を

実践してみれば良いだろう。

驚くほどの効果があることが

わかって面白いはずである。