昆虫の殺人剤

ポーランドに住む学友

Tが三島由紀夫の

『命売ります』を

英文で読んでいると聞き、

日本語で読んでみた。


週刊プレイボーイの連載小説、

それ故、平易な文章で

セクシュアルな女性が登場、

たびたび命のやりとりが

行われるという筋立て。


それはそれで面白いが、

興味を惹かれたのが、

昭和2年発行なる

『日本甲虫図鑑』にある

ヒゲブトハナムグリ。


都会でもよく見かける

この虫を乾燥させ粉末にし、

皮質性催眠剤、

プロムワレリル尿素に

混ぜて服用させる。


脳催眠の間に命令すれば

当人をいかなる方法の

自殺へも導けるというのだ。

つまり自殺に見せかけて

殺人できるというわけだ。


これが本当なら凄いし大変と

さっそく調べてみると、

そうした図鑑は存在しないが、

ヒゲブトハナムグリは実在する。

見たことのある普通の甲虫だ。


しかしこの虫を粉末にし、

催眠剤を混ぜて薬にする、

そういったことは

どこにも出てこない。

あくまで三島の創作なのか。


考えると今夜は眠れそうもない。