初蝉は春蝉
鮮緑の山にやってきた。
6月に入ったばかりなのに
もう蝉が鳴いている。
それも明け方から暫くすると
うるさく鳴き始める。
すでに夏なのかと思ってしまう。
初めて聴く蝉の声を初蝉という。
鳴き声はギーギーと喚くよう。
体は黒く、翅は透明だ。
調べると春蝉という蝉であり、
俳句の季語では松蝉という。
高浜虚子の句がある。
柵柵と 松蝉の声 揃いたる 虚子
柵柵はさんさんと読む。
意味は身につけた玉が鳴る音。
きらきらと美しく輝くとも。
春蝉はそれほど美しくはなく
上品な鳴き声とは言えない。
赤ん坊の如き世に出た声だ。
春蝉だけでなくギーコギーコと
牛蛙の鳴き声のようなものも混ざる。
これは姫春蝉なる可憐な名前の蝉。
その声とは似ても似つかぬものだ。
春蝉+姫春蝉の音量はかなり大きい。
読書もままならぬ喧騒だが、
蝉時雨と風流を感じることにする。