こだわりのモカマタリ

珈琲豆は駅の近くにある

清水屋さんで購入している。

店主は珈琲に大変な愛情があり、

品質の良い生豆を自分で選り分け、

誇りある気高い焙煎を行っている。


妻は店主主催の淹れ方講座に出て、

業務用小型豆轢き機まで購入し、

粉を濾紙に入れ、専用ポットで

ぽたぽたと湯滴を落としていく。

香り豊かな珈琲がカップに注がれる。


妻が好むのはこの店で最も高額な

イエメン産のモカマタリである。

酸味がほどよくあり苦みは強くない。

エチオピア産のモカハラーは

味が落ちると見向きもしない。


毎朝、ハンドドリップされる

モカマタリの珈琲はその日によって

多少味わいが変わるのが面白い。

気温や湿度、湯の温度や淹れ時間、

そうしたことで変わるのだろう。


その変化に珈琲は生き物だなと思う。

湯を垂らしていったときに

泡がむくむくと膨らんでいく様は

美味しさに命が与えられていくようだ。

一口のモカマタリが命を分けてくれ、

やすらぎと元気の源になるのである。