『ライ麦畑でつかまえて』

高校生の頃、
『ライ麦畑でつかまえて』が
どれほどボクの心を捉えただろうか?
J.D.サリンジャーという
ライ麦畑につかまえられたのは
その頃のボクだった。

進学校に入学したはいいが、
ラグビー部の朝練から教室に行くと、
クラス全員がシケタンに没頭していた。
「このインチキ野郎どもよ、
俺の前から消えて失せやがれ!」
心の中で吠えても惨めなだけだった。

『ライ麦畑でつかまえて』の
ウイリアム・ホールデンのように
ボクにはどこにも居場所はなかった。
でもチャップマンように人は殺さない、
レノンを殺すことなんて絶対にない。
大統領を狙うなんてこともないさ。

やるせないボクを救ってくれた小説、
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。
ボクの気持ちはサリンジャーだけが
わかってくれるはずだと思った。
その小説が全米で禁書になるなんて。
「大人はちっともわかってない」
ホールデンは今だってそう思っているさ。