「ひなた凍り」
日向に放って置かれた
「ひなた氷」
ゆっくりと溶けて
やがて水になる
水になって蒸発して
最後には跡形もなく
無と化してしまうのだ
92歳のいまも
京都の桜を守る「桜守」
佐野藤右衛門さんは
いまの自分を
「ひなた氷」と言う
やがて溶けて水になり
最後は無になると
氷のように厳しいが
溶けるほどに心は熱い
名木と呼ばれる桜や
これから名をつける
生まれたばかりの桜
そのすべてを慈しみ
愛情を持って育て生かす
「ひなた氷」となって
最後の最後、無になるまで
「桜守」を全うしよう
そんな藤右衛門さんの生き方は
実に鮮やかで格好いい
自分もいつかそんな風に
何かを守って生涯を全うしたい