抱月

「抱月」は神楽坂の
隠れ屋バーである。
可愛く妖艶なママ、
松島薫さんが笑顔で
迎えてくれる。

一軒家を改築した
こあがりのお座敷で
堀りに足を下ろす。
カウンターのバーが
心を癒やしてくれる。

僕が病気をしたり
コロナの世の中になり、
すっかりご無沙汰、
久方ぶりの来訪だった。
すべてが懐かしい。

「どうしたのかなって
とても心配してたのよ」
「うん、ちょっと
死に損なったりしてた」
「まあ!ほんとに?」

薫ママの趣味はスキー。
雪が降れば落ちつかない。
縁あって北海道、
カムイスキー場の支配人と
結婚していた。

真夜中までウヰスキーを飲み、
外に出ると満月だった。
抱きたくなるような
透き通る純白の月、
「抱月」だった。

*毎日詩を一つ、書き続けて3年近く、今日の詩で1000を数えました