雲の海

朝早く起きてしまい、雨かなと思ったら、

東の空が紅く朝焼けに染まっていた。

しばらくすると晴れてきたので、

ふらりと散歩に出ることにした。


蝉の声に混じってホトトギスが

トッキョキョカキョクと鳴く。

最後のキョクが上手く言えず、

もごもごとしたくぐもった声になる。


ウグイスもついこの間まで

ホーホケキョとは鳴けず

ケキョケキョばかりだった。

鳥も練習すると上手くなっていく。


展望台まで登っていこうと決め

上り坂をふうふうと歩み進める。

ようやく辿り着かんとしたとき、

眼下に真っ白な雲海が広がっていた。


広大な雲の海は白と灰色を帯びた

何層もの波になってうねっている。

ギザギザした鋭い歯のような波や

丸みを帯びた穏やかな波もある。


歓声を上げることも叫ぶこともできず、

凄い凄いと呟いているだけの自分がいる。

忘我の境地とはこういうことなのか。

どれほどの時間、立ち尽くしていただろう。