「長嶋食い」って?

長嶋茂雄さんは天衣無縫、
数々の天才伝説があるが、
そのひとつに超薄造りの
ふぐ刺しをどどどどどっと、
一気に十枚ほど箸で束ねて
食べてしまったという話がある。

立教大学の野球部時代は、
寮で出されたスイカの
切った三角の尖り部分だけを
「甘い甘い」と頬張り、
すべての尖りを食べたという
伝説が残っている。

これらの食事伝説は、
「長嶋食い」という名で
脈々と今に至っている。
「ワカコ酒」なるドラマで
主人公の村崎ワカコが
その名を言って食べている。

焼き鳥屋でさまざまな
部位の串焼きを注文。
レバーの美味さに惹かれ、
その後のハツとねぎまを
右手左手に1本ずつ持ち、
同時に食ってしまうのだ。

「美味しいところを
独り占めする行為」と
テロップが出てくるが、
これは食い気に走った
下品の振る舞いだったと
ワカコは反省するのだ。

大のおとななら
ゆったりと構え、
焼き鳥を一本ずつ頼み、
酒を味わいながら、
串を外さずにぐいっと
食べるのが粋である。

若い頃なら天衣無縫も
許される行為だが、
おとなになったら、
少しを丹念に味わう
「おとな食い」がいい。
粋な男の嗜みである。