赤ワインは「花酒」

僕は友人たちに言っていた。

大好きなものは、花見と花火と赤ワイン。

赤ワインじゃなくて、花酒なら語呂がいい。

だから僕は勝手に「花酒」と言っている。


でも、昨秋、医者から禁酒を言い渡され、

「花酒」が飲めなくなった。

でも、花見も花火もお酒が一緒なら

もっと楽しく華やかになるので哀しかった。


でもようやく「少しだけ」のお許しが出た。

「花酒」をワイングラスに少しだけ注ぎ、

香りを嗅ぎ、口に含んで空気と一緒に飲む。

それだけでこの世のすべてが薔薇色になる。


秋はことのほか赤ワインが美味しくなる。

カベルネ、メルロー、シラー、ガメイ、

どれも美味しいけれど、「花酒」というなら

オールドローズ色のピノノワールに限る。


上品でふくよかで滑らか。

緑豊かなブルゴーニュで育くまれたピノ。

薔薇の花が一輪、大きく咲くような

優雅な香りを嗅いで味わうのだ。


少しだけだからうんと美味しく感じる。

少しだけなのに案外酔ってしまう。

ようやく花見と花火と花ワインが楽しめる。

生きていて良かったなと思えるのです。


※ちなみに本来の「花酒」は与那国島の「どなん」などとてもアルコール度の高い泡盛のことです。