古本と領収書

高円寺でふらっと
時間をつぶしていたら、
「サンカクヤマ」という
小さな可愛らしい
古本屋さんに出会った。

店の外の本棚にあった
文庫本に目がとまる。
好きな音楽評論家、
吉田秀和さんの
『主題と変奏』だ。

文字が小さく
日焼けもしているけれど、
裏表紙に50円の名札。
とても安いので
購入することに決めた。

この中公文庫の中に
領収書が挟まれていた。
三省堂調布支店、
1959年5月26日。
値段は220円である。

最初に本を買った人の
領収書に違いない。
64年の月日を経て
僕の本になった。
とても感慨深い。

領収書を残すなんて、
どんな人だったのか、
想像するだけで楽しい。
その人を思い浮かべながら、
この本を読み進もう。