羅宇屋

羅宇屋という商売があった。
キセルの火皿と吸い口をつなぐ
竹の管を羅宇という。
ラオスの黒班竹を用いるので
その漢字の羅宇と呼ばれた。

江戸時代にキセルが流行り、
ヤニで詰まる羅宇を掃除し、
すげ替えたりする職業を
羅宇屋と名付けたのである。
その多くは露天で営まれた。

キセルで煙草を吸う人が
めっきり少なくなったことで、
羅宇屋は少しずつ姿を消した。
遂に最後の浅草の職人が廃業、
20年ほど前に全滅した。

置屋の長火鉢に粋な女主人が
どっかり座って丸めた煙草を
火皿に詰めてゆったり吸う。
何口が吸ったらカンカンと
キセルを叩いて灰を捨てる。

その妖艶な姿が絵になって、
時代劇でしばし演じられる。
一度は吸ってみたいが、
すべてが金や銀を使った
延べキセルが伊達男に似合う。

どうせ喫煙するなら、
延べキセルがお洒落である。
煙も出にくく匂いも少ない。
警棒の代わりにして
悪漢を退治することもできる。

キセルと刻み煙草あれば
趣味として嗜めるが、
肝心の羅宇屋がいないのは
困ったものである。
ところが中学の級友が
その羅宇屋を始めたらしい。
果たして連絡が取れるだろうか?