大好きだったTVドラマ「イキのいい奴」
子どもの頃に「イキのいい奴」という、お寿司屋さんを舞台にしたTVドラマがありました。
戦後まもない東京・柳橋の鮨屋「辰巳鮨」で、生意気盛りの青年が一人前の鮨職人に成長していくストーリー。大将と青年はしょっちゅう喧嘩しているんだけど、大将や常連さんたちとの人情話が大好きで、家族そろって毎週見ていた記憶があるのです。
とりわけ大好きで、今も覚えているのが「小娘」という回です。
常連の若いホステスのさつきさん(仮)がいつも注文するお寿司をつつきながら、大将に
「出勤前だからあまりシャリが多いのは困る。なんでも、最近はシャリ少な目のお寿司が流行っているそうよ」
というようなことを言って、大将と言い合いになってしまいます。
「うるせえ! 小娘が生意気言いやがって」
「小娘って何よ! 舐めるんじゃないわよ! そんなんじゃ時代に置いていかれるわよ」
「もう二度と来んじゃねえや!」
「頼まれたって二度と来るもんですか、こんな店!」
とお互いに啖呵を切ってしまうのですが、見習いの青年が二人の仲を取り持とうと奮闘。
「ほっといてくれ」
と背中を向ける大将とホステスでしたが、しばらく経ったある日、ふとさつきさんが来店します。
喜ぶ青年を後目に、それでもそっぽを向き合う二人。
「ご注文は?」
とうれしそうに声をかける青年に、さつきさんは不愛想に一言。
「小娘」
「へい!」
ほどなくして大将が出したのは、さつきさんがいつも注文していたネタを、ちんまりしたシャリで握った一皿。
「小娘……お待ち!」
「何よ」
とさつきさんも照れくさそうに、でもうれしそうに口に運ぶと、しみじみ言う。
「やっぱ、大将のお寿司が一番おいしいわ」
「……何いってやがんだい。当たり前だろ」
お互いに照れ臭そうな二人を横目に、青年は満面の笑み。
……と、たしかこんな内容だったと思います。
「よかったよねぇ!」
と言いながら号泣した記憶が、シャリの小さいお寿司や切り分けられたお寿司を見ると、必ず蘇るものです。
しみじみ、いいドラマだったなぁ。
※写真は別のお寿司屋さんです。
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