見出し画像

林家つる子さんと三遊亭わん丈さん「寿 真打昇進披露興行」_2024年3月28日

「寿 真打昇進披露興行」を聴きに鈴本演芸場へ行ってきました。
真打に昇進したのは、林家つる子さんと三遊亭わん丈さんのお二人。お二人が日替わりでつとめるトリは、三遊亭わん丈さんの日でした。

私はオペラもクラシックも大好きですが、子どもの頃から落語が大好き! SNSにはまだ書いていない日も多いのですが、割とよく聴きに行っています。

この日も、たまたま林家つる子さんに興味があってチケットを持っていたところ、個性心理學の弦本將裕先生が、林家正蔵師匠とお知り合いかつ林家つる子さんをご贔屓にされていると数日前に知り、楽しみ度もグーン! と昇りペガサスのごとく倍増していました。

(つる子さんと私は、個性心理學のタイプ分類では同じ「強靭な翼をもつペガサス」なのです)

「僕の友達って言って、楽屋に行っておいで」

と、先生からありがたいお言葉もいただいたのですが、この日はあいにく楽屋訪問はNG。スタッフの方にお花とメッセージを託させていただきました。


■2人の前途を祝福するような、劇場の活気噺と煌めく夜空
古今亭菊之丞「鍋草履」と、柳家三三「釜泥(かまどろ)」

さて、お目当てだったのは今年3度目の古今亭菊之丞さんと柳家三三さん。

ちょっと鼻にかかった艶のある、それでいて気風のいい女形や飄々とした若旦那が大きな魅力の1つである菊之丞さんは、
おっちょこちょいの小料理屋の配達員さんとせっかちな江戸っ子が芝居小屋で巻き起こす、「鍋草履(なべぞうり)」というドタバタ噺を聞かせてくれました。
きっと、今後も劇場が繁盛するようにというご祝儀であったことでしょう。

一方、ひょうきんさと渋みが共存している柳家三三さんがかけたのは、泥棒に一泡吹かせようとイタズラをしかける老夫婦の「釜泥(かまどろ)」。

落語では泥棒の噺も縁起が良いとされ、おめでたい席でよく披露されます。
というのも、「泥棒」の噺は「客の懐に飛び込んでお宝を盗る」ということ。つまり、たくさんの客に来てもらい、ご祝儀もいただけるようにというゲン担ぎになるのです。

サゲで主人公が見上げた夜空は、なんだか真打に昇進した二人の前途のように煌めいていて美しかった!

……と、書ききれないので止めますが、もちろん他の噺家さんも素晴らしかった。
漫才もそうですが、太神楽曲芸や三味線の師匠、江戸家猫八さんの動物の声帯模写など、未来永劫、受け継いでいってほしいと心から願いました。

■昇り龍と……喪服キャバクラ!?
客の無茶ぶりに一流の技術で応える、紙切りの林家二楽

紙切りの林家二楽さんの小粋な毒舌っぷりも楽しくて、何より技術の高さにうっとりしました。
何を切り抜こうかと客席からリクエストを受けると、なんと飛び出したのは、昇り龍と……喪服キャバクラ!

「も……喪服キャバクラ!?」

なんでも、わん丈さんの新作落語のタイトルらしいのですが、そうとは知らなかった私は、大いに驚いて笑ってしまいました。

切っている間は、おしゃみも昭和時代のウイスキーのCMソングを弾いていて、切り絵が出来上がってみると、線香を挟んで美しい喪服の芸子さんがもてなす、なんとも繊細で風情のある作品。

浮世節の立花家橘之助さんは、今は亡き、そして大好きな大好きな、古今亭志ん朝師匠の出囃子を聴かせてくださって、本当にうれしかった。もう、生で聴けることはないと思っていたので。

落語はもちろんのこと、こういう伝統芸能を見ているだけでしみじみ幸せになる。これはもう、私のDNAに沁みついているのだと思います。

■群馬県愛が爆ぜる、林家つる子の新作落語と
驚く上手さの三遊亭わん丈、人情噺「ねずみ」

さて、林家つる子さんが登場すると、群馬県民あるあるを並べる枕で会場を沸かせた後、「上毛かるた」をテーマにした新作落語「JOMO」をかけていました。
群馬県民なら子どもの頃から親しんでいる「上毛かるた」。
百人一首をテーマにした映画「ちはやふる」に憧れていた主人公の朝倉南は、高校進学とともに夢の「かるた部」に入部するも、そこは「上毛かるた部」だった--という青春噺。

マニアックなテーマとお思いの方もおいででしょうが、BUCK-TICKという群馬出身のロックバンドの世代である私にとって、「上毛かるた」はさほど縁遠くない文化なのです。ふっふっふ。

そしていよいよ三遊亭わん丈さんが登場し、わが子との微笑ましいエピソードをちりばめた枕から、健気な親子を天才彫刻家の左 甚五郎が助ける人情噺、おなじみ「ねずみ」を披露しました。

登場人物を見事に演じ分け、泣かせる人情噺でありながらカラッとしたお調子者の勢いは、まるで三遊亭兼好さんが真打に昇進した頃を思わせる。
「上手だなぁ」と膝を打ちました。

なんでも、わん丈さんは滋賀県出身で、その地域から上方ではなく江戸落語に入門したのは彼が初めてだそう。
また、彼が落語を始めたきっかけが柳家喬太郎師匠だと知り、俄然、親近感を覚えました!

というのも、私の人生の宝物の1つに、大好きな喬太郎師匠と三遊亭白鳥さんの「寿 真打昇進披露興行」を末廣亭で観た、という経験があるのです。
そして、二つ目時代から大好きな三遊亭兼好さんの真打記念を生で観ることはできませんでしたが、おめでたい節目をリアルタイムに経験できていることは、なんともうれしい。

惜しむらくは、古今亭志ん朝師匠をもっともっと、生で聴きたかったことです。
人が生きている時間が重なる奇跡は、存分に喜びたい。そういった意味で、今回お二人の真打昇進でめでたい三本締めを打てたことが、とてもうれしいです。

ありがてえっ! これで一杯飲めらぁっ! 
……なんちゃって。落語「のめる」より、サゲを頂戴いたしました。

■うれしい! 林家きよ彦さんと一緒に写真を撮っていただきました!

文末になりましたが、鈴本演芸場でうれしい再会がありました。
一緒に写真を撮っていただいた林家きよ彦さん。

再会と言っても、私が一方的にかめありりりおホールの客席から見ていただけなのですが。

「あの、かめありりりおホールに出ていらっしゃいましたね。アイドルの子どもの担任が、家庭訪問でサイン会に行く噺を聴きました。ものすごく面白かったです!」

ネタばれになるので詳しくは書けないのですが、カンカンカーン! と勢いよく進む。それでいて、ぶっとんだ設定の中に普遍的な人情が滲む、いい噺だったのです。

舞台を下りるとこんなに小柄で可愛らしいとは! 
噺を書いて、覚えて、演じて。噺家さんって本当にすごい!

■番組(落語のみ)

寄席では終演後に番組表を張り出さないので、当日メモを取ってきました。

春風亭一花いちはな「駆け込み寺」

三遊亭天どん「子どもの作文(新作)」

古今亭菊之丞「鍋草履」

古今亭志ん陽「猫の皿」

柳家市馬「牛ほめ」サゲ:牛のお尻のほう

柳家三三釜泥かまどろ

春風亭一朝「芝居の喧嘩」

林家つる子「JOMO」

三遊亭わん丈「ねずみ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?