来訪者があった。 仮にO氏とS氏とする。 両氏は高校来の友人である。S氏は、高校時代もそれ以降も、重要なタイミングでいつも一緒にいたように思う。一方のO氏は、在学中にも話していたが、よく話すようになったのはむしろ卒業後だった。 彼らは、非常に頭が切れる。そして、俺のことをいつも的確に評価してくれる。俺が優れている部分と、それより遥かに多い俺の愚かさを、凡庸さを、よく分かってくれているように感じる。 彼らは、本が散らばった俺の部屋にしばらくいた、そして、「君はこの
靴下にサンダルを履いて、家を出た。 夜道はよく見えなくて、水溜りに足を突っ込む。 じんわりと濡れる感触がある。 構わずコンビニへと歩く。 納豆を買いたかった。 コンビニの中はよく冷えていた。 納豆とカフェラテを買う。 天才になりたかった。 凡庸なこの人間と、あと何年付き合っていけばいい。 味のしない体と、味のしない顔を、あと何度見ればいい。 帰りは傘を差す気にもならなかった。 カフェラテが手をふさぐ。 凡庸なお前は、凡庸なままで、あと何年、生
いま、が、そのときだったと、気付くことなどできようか。 気付くためには、過ぎなきゃいけない。 過ぎたときには、いまじゃない。 目隠ししながら歩いてて、 外れたときには、別の目隠しをされている。 幾重にも夢を見ているようだ。 ふと目が覚めると、ここにいる。 つぎ目が覚めると、ここにいない。 死んでも間に合う、ことがある。 生きてても手遅れになる、ことがある。 ゆく川の流れは絶えることがない。 もとの水でない、とは、断言できない。 流れ流れて、もとの水が同じ川を流れる
近くに住む友人を家まで送る ↓ ファミリーマートでトロピカーナ(マルチビタミン)を買う ↓ ファミマの灰皿に寄ろうとするも、人が多くて断念する 向かいの道のセブンの灰皿へ ↓ 1本目に火をつける ↓ 壁際の公衆電話からバッタが落ちてくる バッタが飛び回り、同じ場所に戻る このバッタを見届けることを決める ↓ カラスの鳴き声がこだまする (こだましたように聞こえたのは、 何羽かのカラスが鳴いていたからだろう) ↓ 2本目に火をつける ↓ 職場の近くでしか見たことがなかった小さ
退屈な、曲が聴きたい 誰にも待たれぬ永遠が ふと訪れたときのような
例えばね、雨の時に降る水が、コーラだったとしようか、そうすると、雨に降られて濡れた私たちは、乾いたあとにもべたべたして、すごく不愉快な思いをすることになる、しかし実際には、雨水は、少なくとも振舞いの上ではただの水でしかないわけで、したがって雨に濡れたとしても、乾けば元通りになる、私たちはこのことによって幾分か助かっていることがあるだろう、しかし、ね、そのことが見えなくしていることを、考えなきゃならないんじゃないか、つまり、雨が降る前と降った後で、何が変わっているのかというこ
書き手から読み手へ、その橋渡として 私が大学4年のときに書いた卒業論文の冒頭は、上のように始まっている。内容としては、近代家族が持つ独特の拘束力や、近代家族の内部にいる人が感じる漠然とした心的負担について、近代家族論やギデンズを参照しつつ、作品分析を通じて明らかにしていくというものである。 上に挙げた文は、「1章 本稿の目的」の冒頭で、本で言うところの前書きにあたる。 前書きは、最後に書くものである。なぜ最初に書かないのかと言えば、理由は単純明快で、まとまった文章を
定刻通り 警告通り ライターの火はなかなかつかない スーツのベルトが蛇のように
ごく最近の記憶 雨上がり、舗装したての横断歩道は、白い部分がよく滑る。 最寄り駅の近くに、異様に短い信号がある。青のゲージがゴリゴリと減っていく、数えてみたら、変わってから4秒足らずで点滅しだした。 長い横断歩道、渡り始めには青だったのに、渡っているうちに赤になってしまってからの、時間 街中で会う約束をしていた人が、赤信号の横断歩道の対岸にいるときの、時間 家の近所、近くの店の看板の反射のせいで、ない横断歩道が見えることがある、幅の広いただの車道 浦安の
歩くと少し右足首が痛む。 エアコンをつけないと寝られないくらいの温度になってきた。エアコンの効きは良好、 和室の畳にカビが生えてから、なんとなく家で料理する気を失くしてしまった。カビは退治したし、外に出ないと飯が食えないのは悩ましいので、いい加減料理をしたいのだけれど… 親と同じ家に住んでいた頃、ご飯が必ず用意されていた、それは俺にとって生活を縛るある種の呪いだった。親不孝と言うだろうか、いや、言わせまい、俺にとってあれは確かに、呪いだったのだ。 米を食べると頭が動く
誰が いつ どこで 何をした 無くなった物と、無くならなかった物 亡くならなかった者はいない 驚くべきことに 言うまでもなく 明日は明日の風が吹くが 今日は今日の風など吹いていなかった 昨日のことは覚えていない 換気をしたら虫が入ったので 換気をして虫を追い出した ギターソロが終わっていないうちに ドラムソロを始めてしまった 独り者同士仲良くしよう 歩く足元に種を植えていく 水やりは誰かがやってくれる 誰もいない部屋の電気をつけた 電気をつけると人
この時間に出歩いても、街には案外、人がいる。 以前、泊まりに来た友人と、夜に高校の坂を登って景色を見ていたら、遠くで10両編成の電車が通った、それを見て二人で、「長くてキモい、あんなのに乗ってたのか我々は」と愕然とした。 別の友人で、奇妙な街を二度ほど散歩した人がいる、彼と歩いていると、ここが世界の中心なんじゃないかと思う場所がいくつも目につく。 彼は、「人間は自分だけだと感じる」と言っていた。彼はホログラムの俺と散歩をしていた。 「たま」というバンドがある、これの曲を
本を読んでて、途中で迷子になったとき、いったん本を閉じると、途端に読めるようになることがある。 時間を置いたら読めるようになるのは当たり前、と思うかもしれないが、驚くことに、本を閉じる時間が一瞬であっても、その効果を発揮する。つまり、読める状態へと変化せしめるのは、時間の経過ではなく、単にその「ひと呼吸」があることなのである。 このとき、すぐに開けるようにと、指を挟んで閉じては、その効果は発揮されない。一度しっかりと閉じる、そしてもう一度開ける、これがなければ、呼吸が置
雨〜🎵
例えば、親の身体から生まれたということについて、ある種のロマンや感謝などを持たずして、ただそれが自分の生の唯一無二の原因であることを受け入れるような
煙の筋を たどってみれば 焼き鳥屋