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頑張れ弟よ

私には年子の弟がいる。

「弟じゃなくてお姉ちゃんかお兄ちゃんが欲しかったなぁ」
昔からそう思い続けてきた。

弟は漫画とゲームが好きで、当時は、いわゆるオタクと言われていたタイプだった。
一方、高校デビューの私は、そんな弟をダサくてキモイと嫌うように。
高校にもいかずに夜遊びばかりしている姉を弟はどう見ていたのかは分からないけれど…

仲が悪いというより互いに無関心という方がしっくりくる関係性。

弟が高校を卒業して早々に家を出て以来、次に会ったのは親戚の葬式。
気づけば10年以上も経っていた。

その後も弟に会うのは親戚の葬式の席だけで、次に会うのは母の葬式の時かもれない…真剣にそう思うくらい疎遠な存在になっていた。


ところが、3週間前。
弟が何か話があると実家を訪ねてくることになり、私も同席することに。

およそ9年ぶりの再会。
すっかりオバさんとオジさんになった私たち。

挨拶もそこそこに、弟から出たのは予想外の話だった。

なんと北海道の会社に転職をして移住するというのだ。
しかも、転職に必要な大型や牽引免許、危険物取扱などの資格も取得したという。
子供の頃から本当に本当に勉強が苦手で、そんな弟が資格を取るために勉強をして準備をしてきたことに、感動し誇りに感じた。

話をする中で、今まで見えていなかった弟の優しさにも気づくことができ、私たちは姉弟らしい(?)会話をすることができた。
大袈裟ではなくて、この年になって初めて打ち解けられたように思う。

その後、これまでの空白の時間を埋めるかのように、3週間の間に更に2回会い食事をした。

そして、今日、弟は北海道に旅立つ。

まずは車で新潟まで向かい、そこから小樽までフェリーで16時間、更に車での移動が続く。
弟が新潟に到着する頃を見計らって「気を付けてね」とメールを送る。

返ってきた返信には
「申し訳ないけど、お母さんのこと頼んだよ」と短く書かれていた。
母を想う、その気持ちに思わず涙がこぼれた。

学歴は低く、収入も決して多くはないけれど、優しくて頑張り屋の私の自慢の弟。
「弟で良かった」やっと心の底から思えるようになった。







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