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統合的ライフ・プランニング【キャリア理論】

キャリアカウンセリングに関する理論の紹介と、それに対して感じたこと、考えたことを書いてみるシリーズです。

今回は、L・サニー・ハンセンの「統合的ライフ・プランニング」、通称ILPを紹介します。

ハンセンは、個人の全人的な発達と健康のためには、仕事と家庭、身体と精神(心)、個人と社会の結びつきが大切だと訴えています。
また、人生の役割の組み合わせを「キルト」にたとえ、それぞれが組み合わさり、意味ある全体になる、としています。
ILPでは、個人とその家族のニーズや願望だけを考えるのではなく、地域社会や世界的なニーズまでも考えに入れる統合的な「キルト」を完成させるためのものであるとし、そのために、6つの重要な課題があるとしています。

①グローバルな視点から仕事を探す
②人生を意味のある全体の中に織り込む
③家族と仕事をつなぐ
④多元性と包括性に価値を置く
⑤スピリチュアリティと人生の目的を探求する
⑥個人の転機と組織の変化のマネジメント

ハンセンの理論の特徴として、「統合的」というのがあります。
重要課題の②、「人生を意味のある全体の中に織り込む」を詳しく見てみます。

人は多元的なアイデンティティを持っており、それが人生の節々で優先順位をもってあらわれてきます。
そして、それを認識することが統合を生み、個人の成長を促します。

人生の役割を分配するのではなく、
「統合」、どう組み合わせることができるかを考えることの大切さを説いています。

多元的なアイデンティティ、という言葉に僕はとても納得感があります。
「私は○○である」というのに当てはまる言葉を、人はたくさん持っているものだと思います。
年齢、性別、出身、社会的な立場、家庭での立場、地域での立場、趣味、性格などなど。
そのどれもが影響を与え合って、私という存在になっているのだと思います。
それをばらばらに切り分けて考えることは、私という存在をばらばらにしてしまうことなのかもしれません。

「会社に私情を持ち込むな」という言葉もあります。
確かに、失恋したことを引きずって仕事の効率が悪くなってしまうと誰かに迷惑をかけるかもしれません。
でも、失恋した私、会社に出勤した私、どちらも「私」です。
無理に切り離して考えようとすると、余計に頭から離れ無くなったり、ふと思い出したときに辛さを感じるのかもしれません。

そんなときに、自分を少し俯瞰して見てみると、自分の中にある多元的なアイデンティティを認識できるのかもしれません。

プライベートで心が落ち込んでいる自分、
社会的な立場、自己実現のため通勤電車に乗った自分。
どちらの私のことも認識し、自分自身がどちらの私も認めること。
開き直りではなく、素直に自分の状態を認めること。
簡単ではないけれど、そう意識することで、自分を「統合」することができるのだと思います。


自分の中にある多元的なアイデンティティ、その優先順位を考える場面は、
進学、就職、キャリアチェンジ、結婚、出産、病気、介護など多々あると思います。
多元的なアイデンティティの優先順位を考えるということは、
「今、自分が何を大切にしたいのか」を考えることなのかもしれません。
人は多元的なアイデンティティを持ち、立場や感情、情勢など様々な変化とともに生きています。
そんな中で、意識して今の自分を見つめることにより、人生の「統合」が生まれていくのだと思います。


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