フリーター女の四国放浪記 その5:高知で居酒屋の女将さんと話すミッション
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搭乗でちょっと泣く
友人たちの激励によって、改めて四国に旅立つ決意を決め、空港へ。
インスタやラインを見ると、そこにも友人達からあたたかいメッセージが届いていた。
「東京来てたの?久しぶりに会いたかったよ」
「いよいよ出発だね、気をつけてね。思い出話楽しみにしてるね」
「無事に帰ってきて」
その一つ一つにじーんと来た。
私は昔から社交に不安を感じやすい性質だ。
医者にかかったことはないから診断されてはないけど、おそらく社交不安障害。
といっても、引きこもり脱出してからは、日常生活に支障をきたすレベルではなくなったので障害とは言えないだろうけど。
だから、常に頭には「私と関わって迷惑じゃないだろうか」「私はここにいてもいいんだろうか」みたいな思考が巡っている。
人との関わりの中で安心感とか愛着とか、とにかく感じるのが難しい。友人であっても。
しかし社交を求めてしまうのが人間のサガであり、社交を避けつつも孤独を恐れるという板挟み。
とても苦しいのだ。
そんなだから、友人たちからの暖かい言葉は、いつも私にとってそれ以上の意味を持つ。
生きてていいんだよ、とか、そのままでいいんだよ、みたいな。
自分が自分にこういう言葉をかけてあげられるのが理想的なんだろうけど、難しくない?
他人から承認してもらって初めて安心感や生きる勇気をもらえることってあるよね。
そうして自分はこれでいいんだって思えて初めて、行動しようと思える。
だって世界は人間の集まりで、そこで受け入れてもらえる自分でないとどこにも居場所がないし、辛いだけだ。
私を受け入れてくれる人達がいるから、旅にも出られるんだなということを、搭乗を待つ中で感じていた。
いざ高知へ!
搭乗は特にトラブルもなくスムーズに進んだ。
ジェットスターは、非課金だと機内持ち込みが7キロまでという規約があるのだが、測ったら普通に500グラムほどオーバーしていて焦ったが何も言われなかった。そういうもんかと面白くなった。
窓際を選んだのでずっと窓の外を見ていた。
四国は山林が全体の4分の3を占める。
その通り、上空から見る四国は恐ろしいほど山、山、山…だった。
山の間を縫って、どうにかこうにか住めそうなところに、ちょこんと町がある。そんな印象を受けた。
とんでもない秘境に来たか!と心が躍った。
高知空港に降り立つと、むわっとするような暖かさを感じた。
行ったのは6月の上旬で、梅雨が始まる直前。そのころでもかなり蒸し暑かったように思う。
高知空港にはヤシの木のような南国っぽい木がたくさん植えられていて、異国情緒。
いよいよ来たな〜!という気分で、この時には言いようのない不安もすっかり消えていた。
そしてバスで高知駅へ。
バスの道中、山の感じとかを観察してみたが、めちゃくちゃ地元を感じてしまった。
四国は森林が多いといっても、その60%は植林された杉やヒノキらしい(後に訪れる植物園で勉強した)。
地元も杉やヒノキが多く、さらに高知と同じように山に囲まれているので、似たような風景になるのは当然かと思いながらも少しおかしかった。
そして街中に入っていくと路面電車が。
街中に線路と電車があるの、かなり新鮮で面白い。
乗っているのが学生やサラリーマンなど、地元の人っぽいのがまたよかった。
コミュ障にはハードル激高ゲストハウス
高知駅に到着後、予約していたゲストハウスへ向かう。
向かう道すがら、すれ違ったおじさんの顔に驚く。肌が健康的に焼けた、野生の加山雄三なのだった。
そうか、ここは四国…すれ違う人の顔も東北とは異なるのか…と衝撃を受けた。
ちなみに今調べたら加山雄三さんは神奈川県出身だった。西郷どんに似ているから土佐あたりの出身だと思っていた。(というかそもそも西郷どんは鹿児島出身だ…)
ゲストハウス、ここが私的にかなりの鬼門だった。(実際にはとても良いところだった❗️)
ゲストハウス、利用したことはあるだろうか。
私のイメージでは、若い子達ばかり、コミュニケーション能力必須、話せなければ冷ややかな目でみられる…。
もちろん口コミを念入りに調べて、雰囲気の良さそうなところを選んだが不安が大きかった。
なんならもうここでうまく馴染めなかったら高知旅が終わる…とすら思っていた。同じゲストハウスで3泊もするので。
今思うとこれもめちゃくちゃ社交不安だな。
結論を言うと、優しい人たちに恵まれたことでとても良い滞在になった。
とても可愛いゲストハウスの外観や内観に驚きつつのチェックイン。
優しい雰囲気のオーナーさんからとても優しく施設の説明を受け、ホッとする。
荷物の整理をしていると、今日から同じく三泊するという女性がチェックインしてきた。
彼女はりかさんといい、仕事を辞めて失業保険をもらいながら旅をしているとのことだった。
若く綺麗な女の子で、笑顔を絶やさず親切で、旅を楽しむ行動力がものすごく、そして素敵な落ち着きもあった。
りかさんは私に色んなことを教えてくれた。
旅の楽しみ方、おすすめの場所、おすすめの電動自転車、ゲストハウスでの振る舞いかた…。
他人に惜しまず与えるというその姿勢に、ものすごく尊敬の念を抱いている。
私の高知での幸運は、このゲストハウスにこのタイミングで泊まれたことに尽きるかもしれない。
それくらい高知の滞在を素敵にしてくれた場所と、出会いだった。
初めての一人居酒屋
17時すぎ、意を決して居酒屋「磯の茶屋」へ向かう。
ここは知人に教えてもらっていた場所で、三泊の滞在のうちどこかで行ければいいと思っていたが、
ここまでで「迷ったら今すぐ行動」するととても良い感じになっていたのもあり、初日にした。
一人で居酒屋に行くなんて初めてで、これもかなり勇気がいることだった。
なるべく他人と話す、関わる旅にする!と決めていたので、できれば店主さんとも話してみたい…と思いつつ。
堂々と聳え立つヤシの木をいちいち驚いて見上げ、街中に流れる川を眺めながら、少しの不安を感じつつも、ただ自分の欲求を満たすために、居酒屋を目指して歩いている。
とても奇妙な気持ちで、とても嬉しかったのを覚えている。
磯の茶屋に入ると、他にお客さんは誰もいなかった。
カウンターと小上がりがあり、仕事終わりにはサラリーマンで賑わう店内が容易に想像できた。
いかにも一人旅で一見の私に、女将さんと女性店員さんは少し戸惑っていたように思う。
(ゲストハウスのオーナーさん曰く高級な居酒屋らしく、行く前に予算の心配をしてもらっていた)
カウンターに座り、とりあえずビールとカツオの塩たたきを頼んだ。
すると女将が気を利かせてくれ、普段は五切れで提供しているものを三切れにしてくれた。
そして所在なく待っているとどでかいカツオのたたき。美味しかった。
ビールをちょっと飲んだところで、勇気を出して女将に話しかけてみる。
実は東北から来てまして、今日が初めての高知でして、ここは東京の知人におすすめしてもらいまして…。
すると女将は嬉しそうにしてくれ、ぎこちなくではあるが会話が始まった。
まず素性を明かすことって大切なんだなあと思った。
私がどういう目的でここにいるのかを明かさないと、カウンターにひっそり座る女をどう扱って良いか困るよね。
(私は警戒心が強めに見えるので他人からは話しかけづらいらしい)
高知県で食べるべきもの、よさこいの話、夏は暑いから良い時に来たね、などなど…
最初はお互いにぎこちなかったが、だんだんと打ち解けていく感覚だった。
そしていつの間にか、女性店員さんも交えて私の観光プランを考える時間に。
桂浜は行かれるの?あそこは気持ちええから行ったほうがええ、ああ植物園行かれるの?ええね。あとは高知城やな、ひろめ市場も…
あれあそこはどうなってるんだっけ、いや私なんか行ったことないからわからんが…
あれやこれやと、時には二人だけで土佐弁で喋っているのを頷きながら心地よく聞いていた。
特に女性店員さんはなかなか私と視線が合わず、シャイなのかもしれなかった。
なのにものすごく真剣に悩んでくれていた。そこがすごく可愛らしいというか、暖かく嬉しい気持ちになった。
土佐弁がとにかく良い。方言を聞くと、旅情をすごく感じる。
色々と話してもらったこと、考えてもらったことに感謝し店を後にした。
最後には満面の笑みで、楽しんでくださいね、と二人で送り出してもらった。
このお店も知人から聞いていなければ絶対に行くことはなく、あの尊い時間もなかったと思うとやはり縁は大事だとつくづく思う。
ゲストハウスに帰るまでの道すがら、少しベンチに座って人びとを眺めるなどし、高知での夜の訪れを体験した。
そのあとは近くの昔ながらの銭湯に行き、嘘みたいに熱いサウナに入り、原子炉の冷却装置みたいな水風呂に入るなど楽しんだ。
22時ごろにゲストハウスに戻ると、リビングでは私以外の3人くらいの滞在者がわいわいとやっていた。
ここで混ざれたら良かった、と今は思うが、その時はすでに社交キャパオーバーだった。
ひっそりとベッドに潜り、遅くまで続く宴会の笑い声に孤独感を募らせながら眠ることになる。
高知入りはなかなか幸先のいい始まりだった。
今回も呼んでいただきありがとうございました!
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