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野球の”やる気スイッチ”の入れ方



石橋秀幸
元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

小中学生の野球の指導をしていると、保護者からの相談もよく受けます。

やはり、全ての親が願っているのは、野球が上手くなってレギュラーとして活躍してほしいということです。

そのために、お父さん、お母さんは自分の時間を犠牲にして、惜しみないサポートをしています。

その反面、我が子の野球に対する姿勢に不満を持ってしまう親が多いようです。それは、子どもに対する強い思いや期待があるからだと思います。

親の不満とは、例えば平日に自主的に練習をしないことや、試合後の反省が見られないといったことです。

親としては、「上手になってほしい」「失敗したことを改善してほしい」「反省をして次に生かしてほしい」などと思いが強くなるほど、子どもへの声も厳しいものになる傾向があります。

そこで今回は、子どものやる気にスイッチを入れて、自発的な行動を促す方法について解説します。でも、それらは決して難しいことではありません。

具体的な方法をわかりやすくお伝えしていますので、最後までご覧ください。

それでは、やる気スイッチのお話をはじめていきましょう。


子どものやる気のスイッチをどう入れるか

子どものやる気を引き出すことは、野球での活躍を期待する親にとっては大切なことです。ただ、子ども自身の内面から湧き起こる熱意や意欲がなければ、長期的に続かないものです。

そこで、今回は子どもが自発的に練習に取り組むようになるための心理的アプローチや、親ができる具体的なサポート方法について解説します。
これまでにお伝えした内容で、子どもの自然な興味や内面の声を理解しました。それに基づいて子どもの自主的な行動を促す方法を提案します。

また、子どもが自分の目標に向かって自立して取り組むための環境作りについてもアドバイスします。


自発的な行動をどのように促すか

自発的な行動とは、自分自身で決断を下し、自らの行動に責任を持つ能力です。

もちろんあなたは、お子様に自発的な行動をしてほしいと考えていますね。自発的に行動するためには、お子様が自らの意志で行動できる環境が必要です。

あなたは、その環境を整えてサポートしましょう。

具体的には、お子様に選択の機会を与え、自分で決断を下す機会を増やしていくことが不可欠です。

ただ、そこには親として我慢と忍耐が必要になります。

たとえば、練習の日程やメニューをお子様に選ばせることは、自発的な行動を促す良い方法です。しかし、それはあなたにとって、物足りない内容かもしれません。

そんな時、つい「こうしなさい」と指示をしたくなると思いますが、お子様の意見を尊重しつつ、改善策を提案するようにしましょう。

また、自分で決めた練習メニューやスケジュールですが、子どもの場合は、それを初めから自主的にできないことが多いでしょう。そして、継続する力もないかもしれません。

ですから、親としてはイライラしてしまい「いつになったら練習するの?」と、ついきつい口調で言ってしまうことがあると思います。

ですが、自発的に行動してほしいと思うのであれば、イライラをぶつけるのではなく、別のアプローチを考えてみましょう。

たとえば、「自分からすすんで練習を始めるのは大変だよね。もしも4時半から練習するのが難しいなら、時間を変えてみる?」とか「今日の練習で、どんな目標を達成したい?何か手伝うことはある?」という声かけはどうでしょうか。

それでも、自発的に練習を始めないようなら、何か理由があるのかもしれません。「自主練についてどう思っているか聞かせてくれる?」などと、お子様の気持ちを聞くようにしてあげましょう。

お子様が自分で決めた練習プランに従うことで、自己管理能力と責任感が養われます。しかし、練習に気持ちが向かないこともあると思います。

そのような時は、親として励ましの言葉をかけ、サポートの意思を伝えましょう。そして、自発的な行動に対する適切で肯定的なフィードバックを与えてあげましょう。それが、お子様の自発的な行動の励みになるはずです。

また、お子様が自発的な行動を起こす原動力は、自分の目標を設定することです。

そこで、次は目標設定について考えてみたいと思います。


目標設定をどのように促すか

子どもの自発的な行動を促すひとつのエッセンスに、目標があります。

目標設定は、大人からすればあたり前のことですし、目標に向かって努力することが大切だと考えるのは普通のことです。

しかし、ほとんどの子どもが、目標の具体的な立て方を知らないはずです。ですから、お子様の目標設定には、親のあなたのサポートが欠かせません。

野球をしているのですから、「将来はプロ野球選手になりたい」という目標を持っている子がほとんどだと思います。または、「甲子園出場」という目標を持っている子もいると思います。

小学生の場合、それは少し先の目標になりますから、たとえば「一年先にどんな選手になっていたいか」といったことを聞いてあげましょう。中学生であれば、進学したい高校を決めてみるのもいいでしょう。また、高校生や大学生であれば、より現実的な目標が設定できるはずです。

少し先の目標が決まれば、そのために1ヶ月後にどうなっていたいか、その1ヶ月後のために今週の目標は何かという具合に、期限を短くしていき日々の目標にブレイクダウンすることが効果的です。

その時、具体的で達成可能な目標を設定するようにしましょう。

たとえば、「シーズンを通して打率3割をキープする」と決めたとします。そのために、「一試合で2本のヒットを打つ」と決めました。そして、ヒットを打つために必要な日々の目標を決めます。

その時のあなたは、以前にお伝えした、自主性と主体性を育むコーチングのテクニックを使って、お子様の具体的な目標へと導きましょう。

目標を設定することで、お子様は具体的に何を目指せばいいのかわかるようになります。それが、自発的な行動へとつながり、結果的に野球のパフォーマンス向上へとつながっていきます。

そして、お子様の目標達成をサポートするために、あなたは常に適切な励ましとフィードバックを与えるようにしてください。

お子様が目標に向かって取り組んでいるプロセスを評価して、小さな成果を褒めましょう。それが、お子様の自信とモチベーションを高めます。

目標達成は、常に小さな一歩から始まることを親子で理解し、具体的な行動をしていきましょう。その積み重ねによって、いずれはお子様自身のペースで成長できるようになっていきます。

あなたは、そのサポートをしていきましょう。

なお、目標の具体的な設定方法については、次回お伝えする予定です。

では、次にそのサポート方法について考えてみます。


親としてのサポートはどうあるべきか

野球での目標が決まったら、お子様が目標に対してどのようなアプローチを取っているのか観察しましょう。

お子様には、目標を達成するまでのプロセスを大切にすることが重要だと、繰り返し伝えてください。そして、小さな努力であっても、目標に向かう姿勢を評価して褒めることを習慣にしましょう。

すでにお話をしたように、日常的な会話を通じて信頼関係を高め、お子様の興味や関心、抱えている障壁や悩みなどを確認してください。

その際は、共感と理解を示し、励ましの言葉をかけることが重要です。

野球の目標を決めることができても、日々多くの刺激を受けている子どもは、野球のことだけを考えるのは難しいはずです。

なぜなら、学校生活のこと、お友達との関係、楽しい動画やゲーム、そして習い事や塾といったように、野球以外に大半の時間を使っています。

そのためか、多くの子どもは自主的に練習ができないことが多いようです。そのような場合でも、先ほどお話をしたような会話を通じて、お子様の考えを聞き出したり、気持ちを野球の練習に向けるような声かけをするようにしましょう。

練習では、目標達成のための具体的な課題に焦点を当てます。たとえば、バッティングの精度を高めるためには、どのような練習が効果的か?また守備力を向上させるためにはどのようなトレーニングが必要かといった課題が生まれます。

それらを一緒に考える時間をつくりましょう。ただし、過干渉にならないように気をつけることが重要です。

課題をクリアするときには、無理のない練習メニューを考える必要があります。ついついスキルの上達ばかりに目を向けがちですが、楽しみながら続けられることを、お子様と一緒に考えるようにしましょう。また、できれば専門家のアドバイスを取り入れることも効果的です。

そうすれば、お子様の野球の技術を高められるのはもちろん、達成感を経験することができます。

親としての大きな目標は、お子様が自主性を持って行動できるようにサポートすることですね。お子様の自主性を尊重しつつ、適切なアドバイスをすることで、お子様は自己管理能力を身につけられます。

そして、自分自身の目標に向かって積極的に取り組むことができるようになります。

あなたが、受容と共感を示しながら、お子様の努力の過程を支えることができれば、お子様の継続的なやる気につながります。

目標に向かって努力する喜びをお子様と共有していきましょう。

そして、生活全般でのサポートも忘れないようにしてください。

練習と休養のバランスを考え、疲れを翌日に残さないこと。学業をおろそかにしないこと。栄養バランスのとれた食事を用意すること。十分な睡眠時間を確保すること。時には気分転換も必要でしょう。

それら全般的なサポートによって、お子様が最良の状態で野球に取り組めるようにサポートしてください。

このように、親としてのサポートは、お子様が成長するための大きな助けとなります。お子様の気持ちを理解し、努力を認め、必要なサポートを提供することが、お子様の無限のエネルギーになります。

親のサポートが、お子様の経験を豊かにし、全面的な成長に寄与することは間違いありません。

その上で、野球での成功に必要なことは、具体的な目標です。

次は、目標設定をする時のサポート方法についてお話をしたいと思います。


小さな成功体験を積み重ねましょう

野球をする子どもにとって、小さな成功体験を積み重ねることは自信を育む上で非常に重要です。

小さな成功体験は、自己効力感を高め、野球への情熱を維持する原動力となります

練習で新しい技術を身につけたり、良いプレーをしたりしたときはもちろんですが、子どもが挑戦したこと自体を評価することも忘れてはいけません。

試合の結果に関係なく、努力と挑戦を称賛することで、子どもは失敗を恐れずに新しいことに挑戦する勇気を持つことができます。

親としては、子どもが小さな成功体験を積み重ねるために、励ましながらプロセスをサポートすることが求められます。


小さな目標はなぜ重要か

小さな目標を設定し達成することは、お子様の自信を育て、モチベーションを維持するのに非常に効果的です。

小さな目標は達成が現実的ですし、お子様が自分の能力の向上を実感しやすいです。大きな目標には自信が持てない場合でも、まずは身近な小さい目標から始めることで、「やればできる」という自信が芽生えます。

たとえば、次の試合でヒットを2本打つための小さな目標として、自主練では相手ピッチャーを想定した素振りを行うといった感じです。その際、ただバットを振るのではなく、ピッチャーのモーションを視覚化し、実際に対戦しているように、球種やコースを判断して行うことが効果的です。

小さな成功体験を積み重ねることは、お子様にとって大きな自信になっていきます。それが、野球への自信と情熱になります。

また、小さな目標を達成するプロセスで、お子様は新しいスキルを学びます。それが、自分自身の成長を実感することにつながります。

小さな目標を日々達成することは、より大きな目標に向けての意欲の高まりになります。それは、ひとつひとつクリアしていく中で、遠くの目標に近づいている実感が持てるからです。

それが、自己効力感の強化になります。

何度も繰り返しになりますが、お子様が小さな目標を設定し、それに向かって努力することをサポートし、目標を達成した時には称賛することが大切です。

このように、小さな目標は、大切な一歩一歩を刻むマイルストーンになります。

小さな目標の達成を喜び合いながら、お子様の可能性を育みましょう。

次は、目標の具体化について考えてみたいと思います。


目標をどのように具体化するか

野球での目標設定をする際、目標をできるだけ具体的に設定することが大切です。それは、お子様の野球のスキルアップに直結するからです。

具体化された目標は、明確な方向性を持つことになります。それが、モチベーションを維持しやすくなる秘訣です。

では、どのようにしたら目標が具体的になるのでしょうか。目標を具体化する際には、以下の点に注意すると効果的です。

  1. 達成可能な目標
    目標は、現実的で達成可能なものでなければなりません。たとえば、「次の試合でヒットを2本打つ」や「次の練習でピッチングのリリースポイントの位置を身につける」など、明確で達成可能な目標を設定します。

  2. 具体的な目標
    目標は、具体的で明確である必要があります。数値目標を設定すると具体性が増します。たとえば、「打率を3割にするために毎日素振りを50回する」とか「毎日20分はストレッチをする」のように、数値的な指標を設けることで、目標が明確になります。

  3. 期日を設定した目標
    「来月末まで」や「今シーズン中に」など、いつまでに何を達成するか期限を定めることで、目標に向かう強い意欲が生まれます。

  4. 子どもの関心が高い目標
    目標は、お子様の興味や長所に基づいていると効果的です。長所や強み、興味に沿った目標を持つことで、より高いモチベーションを持って取り組むことができます。

このように、具体的で現実的な目標を設定することで、目標の具体性が高まります。具体性が高まれば、達成率も高まります。それが、モチベーションを維持しながらスキルを向上させることにつながります。

あなたは、具体的で明確な目標設定を手助けし、お子様が自分自身の目標に向かって前進できるようにサポートすることが重要です。


小さな達成をどのように祝福するか

お子様が野球で小さな目標達成をした時、それを祝福し賞賛することは、お子様の自信を育む上で非常に重要なことです。

お子様が成功を感じることを繰り返していけば、モチベーションのアップによって、長期的な野球への取り組みになります。

次のような方法で小さな達成を祝福しましょう。

  • 具体的な称賛をする
    お子様が目標にしていた、特定の技術やプレーができた時、その具体的な点を称賛します。たとえば、「今日のバッティングは本当に素晴らしかったね。フォームが改善されているのがわかったよ」と具体的に伝えることが効果的です。

  • 達成の瞬間を共有する
    お子様の小さな成功を家族で共有しましょう。それを祝うことで、お子様は、その達成を自分で認識でき、その達成を価値あるものと感じることができます。家族全員で拍手したり、ハイタッチで盛り上がることで、達成感は最大限になるでしょう。

  • 記念撮影をする
    目標を達成した瞬間、グラウンドで喜びを表現しているお子様の写真を撮ってみてはどうでしょうか?きっと良い思い出の写真になるはずです。

  • 継続的なサポートを表現する
    達成を祝うと同時に、今後も目標に向けてのサポートを続けることをお子様に伝えましょう。それにより、お子様は安心して次のステップに進むことができます。

このように、お子様の小さな達成を適切に祝福しましょう。そうすることで、お子様は自信を深め、次の目標に向かって自発的に行動できるようになります。

そして、適切な祝福は野球への情熱を持続させることにつながります。


今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、子どもが野球で成功するための、親のサポートの重要性について考えてみました。

まず、子どもの自発的な行動を促すには、自ら選択し決断を下せる環境を整えることが重要だとお話しました。そして、具体的な目標設定とその達成が、子どもの自発的な行動の原動力になるということもお話しました。

目標は具体的で達成可能なものが効果的です。

さらに、親の適切なサポートとして、子どもの頑張りを認め、適切なフィードバックをすることが大切だということがわかったと思います。

また、小さな成功体験を積み重ねることの重要性もお話しましたね。小さな目標達成を祝うことで、子どもは自信を深められます。

これからも、子どもの自主性を尊重し、具体的な目標設定と達成を促し、小さな成長を褒めることが、子どものやる気と自発性を高めることになります。

今回の内容も、何度も繰り返し確認して、お子様の野球の能力を高めていきましょう。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達のための最新の情報を、エビデンスに基づいてお伝えします。

引き続き、野球のレベルアップのために頑張っていきましょう。

それでは、またお会いしましょう。


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。

現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
著書多数。

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■石橋秀幸これまでの業績:
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