幸せの青いポスト
今シーズン途中から、水戸ホーリーホックのホームゲームに青いポストがおかれているのをご存じでしょうか。
設置されているのは、バスを降りてスタジアム正面向かってすぐ右側、チケット売り場隣の葵龍会(後援会)ブース。
ここに、水戸の選手に直接メッセージを届ける専用のポストがあります。
ここにメッセージを書いて入れると、
翌週のホームゲームではメッセージボードとして、通路に掲出されて、選手が直接見てくれる仕組みになっています。
言葉が、直接選手に届く仕様。
・・・えっ、選手とサポーターの距離が近い水戸なら、そんなことせずにバス待ちや練習場で直接話せばいいじゃない、って?
そうじゃない事情があるんですよ。
この青いポスト、設置までの流れについて、そして実現して分かったことについて、ここに綴ります。
『葵龍会』とは
まず、「葵龍会」という組織を説明しなければなりません。
葵龍会とは、水戸ホーリーホックの後援会です。
よく、サポーターズクラブとどう違うの?と聞かれますが、サポーターズクラブはクラブが直接運営しているもの。
サポーターズクラブに入ることで招待チケットやコースによっては限定グッズが手に入るほか、シーズンパスポート(年間チケット)の購入権利が得られます。
葵龍会は、クラブから公認を受けた後援会組織として、
サポーター同士がお金を出し合って、サポーターが自らクラブを支えようと始まったものです。
これまで細々とではあるけれど、支援者を集め、抽選会等で会員に還元しながら強化支援金をクラブに上納してきました。
その取り組みに加えて、サポーターの手で何か仕掛けたい、と会長を先頭に動き出したのがつい最近のこと。コロナ禍による足踏みを余儀なくされましたが、今年になってようやく行動に移し出した、というわけです。
で、手始めに何かできることをということで始めたのが、あらかじめ会員募集向けに刷ってあったチラシを試合前に時間を決めて配ることでした。
ところが、いざチラシ配りを始めてみると、足を止める人はまばら。
それに、知っている人と数回スタジアムに来る人にチラシを配り終われば、チラシ配りだけでは活動そのものもじり貧化するのも目に見えています。
どうにか、そんなにお金がかからない中で、「サポーターが支える葵龍会」のイメージをアピールすることはできないだろうか。
そこで思い出したのが、メッセージを送る『ポスト』でした。
『ポスト』は心をつなぐ魔法の箱
突然ですが私の一族は代々、郵便局を営んでおりました。
曾祖父の時代に明治政府からお達しを受けて近くの敷地を貸して郵便事業を立ち上げたそうです。
当時は郵便局以外にもいろいろな事業に手を付けていたそうですが、今や実家の建物以外に面影を残すものはありません。
当然、郵政民営化の流れには逆らえず、その渦中にいた父はその郵便局を後任(当然私ではない)に譲り渡すまで、大変な苦労をしたと聞いています。
それでも、父は誇りをもって郵便局の仕事を務めあげました。
郵便局という仕事柄、正月には大量の年賀状が父あてに届いていました。
私が宛名を確認して仕分け終えると、父は自分宛てに年賀状を一枚一枚確認し、言葉こそないものの時折笑みをこぼしていました。
時代を経るにつれて、デジタル全盛の時代。それでも、パソコンだけによらず、わざわざ手書きやプリントゴッコ(懐かしい)で作って送ってくれる猛者もいたりして、心の通い合いを感じていたのを、横でずっとほほえましく見ていたものです。
「自分のために手間をかけてくれたという嬉しさ」
を、ポストははがきを通して伝えてくれる。
その良さを父のそばで見ていたからこそ、何かイベントでポストを見かけると嬉しくなってしまう。
サッカースタジアムでも、カテゴリー問わず応援メッセージを送ることができるポストが有志の手で設置されているのを目にします。
こういうのを水戸でやりたい。
勝手ながらずっと思い続けていました。
そして、後援会の活動が活発になろうとするのを機に、
ここならできるんじゃないか、と考えていました。
クラブの本気を見た
かくして、思いは固まりました。
自分は結構引っ込み思案になるりがちなのですが、行くときは積極的にゲーゲンプレスをかけにいく。
何を思ったか、5月にあった初回のチラシ配りの後に後援会の会長に直談判しました。(今思い返しても不遜以外の何物でもないと反省していますが)
すると。
いいね。やってみよう!
という会長の返事。
あっさり過ぎるゴーサイン。
(もちろん、別日に開かれた幹事会で承認を頂きました)
そして後日。
会長「ポスト、仮だけど、できたよ!」
とのことで見てみると。
ホーリーくんの誕生日に合わせて、メッセージを書いて投かんできるようにしてくれていました。本当は言い出しっぺの自分がやらなきゃなんだけど。
しかも、このポストに投函されたメッセージは、
先週入場時に、選手が通る廊下の壁に直筆のメッセージを(できる限り)そのまま掲示してくれることになったのです!!!
さらに、スタジアムDJの寺田さんが、投かんされたメッセージの選りすぐったものを開場時アナウンスの中で読んでくれることになりました。
それだけではありません。
さらに2試合後には、、、
仮だったポストが、しっかりした木製の青いポストに生まれ変わっていたではないですか、、、!!!
なんでも、工作好きな某クラブスタッフが、葵龍会のリクエストのためならと忙しい作業の合間を縫って作ってくれたんだそう。
ここまで、提案から最終形態の実現まで5試合とかかっていません。
なんというスピード感でしょう。
それに、自分は原案を提案しただけなのに、いろんな人が裏でたくさん調整してくれて。理想を超える形にまで仕上げてくれたことに、感謝の念しかわきませんでした。
いや、正確に言えば何回か泣いている。
これが、水戸ホーリーホックというクラブの力、サポーターの力です。
ホーリーホックを好きでいてよかった。
ポストを置いてみてわかったこと
ポストを設置してから、老若男女様々な方がブースに立ち寄っていただけるようになりました。
もちろんお手伝いに来る選手目当てでキックオフ1時間前に来てくださる方も多いのですが、純粋にメッセージ書きたい!と言ってきてくれる子供さんの多いこと。(もちろん親御さんには葵龍会の入会チラシもお渡します)
その結果、回を重ねるごとにメッセージの数は増えていきまして。
本当にありがたいことです。
中には、
「声を出すのは恥ずかしいし、ましてや選手に直接声かけるなんて絶対できないけど、手紙なら心置きなく思いを伝えられていい!」
という方もいました。
書き出しの話に戻ってしまいますが、水戸というクラブは選手スタッフとサポーターとの距離があまりにも近いがゆえに、その距離感になじめない人を、どこかで取りこぼしていたのかもしれない、とこのポストを通じて感じました。
応援は選手に向かって声を張り上げるだけではないんです。(決して高校野球の某応援団を批判したいわけではありませんが、、、)
積極的に出ていかずに、そっと見守りながら、遠巻きに見つめながら、、、という人は、関東は特に多い。
けれど、ある程度形にしないと選手には届かないことを、コロナ禍で痛いほど思い知ったはず。
だからこそ、このポストに届けられるメッセージを貼り出すことが、
今までとは違う形で選手のパワーに変換できるようになっていれば、
少しでも水戸を応援したいと思ってくれるお客さんに居場所を与えて、取りこぼさない工夫の一つになれたのかなと。
図らずも、思い切って行動に移したからこそ得られた、学びでした。
おわりに:僕たちと契約して葵龍会の会員になってよ!
もちろん、この青いポストを見てもらって、こんなことも、あんなことも葵龍会でやりたい、と思ってくれる人は多いはず。水戸のサポーターなら、できます。(たぶん)
すでにBBQの開催も決まりましたし、もう一つ、会員主導で何か準備しているとも聞いています。
葵龍会ブースに行くと、何かワクワクすることが試合前に待っている。
そんな手作り感あふれる空間にできたらいいなと思います。
水戸ホーリーホックのホームゲームも、今年は残り4試合です。
勝敗にかかわらず、ワクワクできる空間を作るために、ぜひケーズデンキスタジアムに来てください。
そして気になったら、来年からで全然構いませんので、葵龍会への入会もぜひ、よろしくお願いしますね。