見出し画像

オンライン読書会ログ|第1回プロダクトマネジャーの教科書を読み解く会

第1回プロダクトマネジャーの教科書を読み解く会を2020年1月某日、Zoomを使ってオンラインで開催しました。

自分はフルリモートのデザインチーム、Goodpatch Anywhereに所属しているのでオンラインMTGは慣れっこですが、勉強会を主催するのは初めてでした。Twitter経由で1名、Anywhereメンバー5名、総勢7名のUX/UIデザイナーで実施しました。

みなさん業界の経歴も長い猛者たちです。

この回の参加条件は『プロダクトマネジャーの教科書』第1章を読んでくること。

良書と名高いこの本ですが全14章、400ページに及ぶボリュームを1回の読書会でカバーするのは無理です。ソフトウェアデザインの機会が多い自分たちがどう解釈すべきか、1章ずつ読み進めながら理解を深めたいというのが開催の意図でした。

合計2時間の会になりましたが、その内容を記録しておくことにします。


そもそもプロダクトマネジャーとは

全14章あるこの本を読み進めるにあたり、前提がずれていると話が噛み合いません。オンラインホワイトボード、Miroを使って「自分の考えるプロダクトマネジャーとは」を黄色い付箋で書き込んでもらいました。

出し尽くしたところで、それらをグルーピングし、ラベルを付けてみた状態がこちら。

いろんな意見が出た中で、ミニCEOはわかりやすいと好評でした。グループのラベルは大きく4つ「方向を示す」「全体に関わるよ」「つなぎ役」「責任」です。今度はこれらの関係性に話を進めて行きます。ちなみに進行はアドリブです。笑

まず「全体に関わるよ」と「責任」の関係性って何でしょうか。「全体」とは複数の部署にまたがる組織的な意味合いと、プロジェクト初期からリリース、改善までという期間的な捉え方ができます。つまりどちらももっともコミットしている存在=責任者であると言えそうです。

では「方向性を示す」と「責任」の関係性はどうでしょう。普通の組織は自分の仕事を全うする従業員(Worker)の集まりです。そんな中で全体を見渡して方向を示す仕事はプロダクトマネジャーの役割に思えます。与えられたミッションをこなすWorkerに代わって、長期的視点を持って都度Directionする責任があるように思えます。

今度は組織の話に飛び火します。

一般的にマネジャーと聞くと上から指示を出す人という印象を受けます。ただプロダクトマネジャーは部署間を横でつなぐ役割もありそうです。開発プロセスから各部署にミッションを与えつつも、全体での成果を出すためにはつなぎ役として、例えばマーケティング部と製品開発部とをつなげる必要性があります。

この点からもプロダクトマネジャーはトップダウン組織のいわゆる部長、課長とは違う役割に思えてきます。

今でこそスタートアップなどで当たり前のことに思えますが、この本が書かれたのはおよそ13年前です。世界は確実にアップデートされている気がしてきます。


この本の全体感

次に全員でこの本の目次を眺めてみます。

第1章  プロダクトマネジャーのための戦略的計画立案フレームワーク
第2章  トレンド観測・調査・顧客セグメンテーション
第3章  競争戦略のための競合分析
第4章  ブランド戦略
第5章  財務と価格のパフォーマンス
第6章  新製品を利用した戦略的成長
第7章  新製品プロジェクト
第8章  市場投入戦略の策定
第9章  既存製品の管理
第10章 マーケティング計画を利用した顧客需要の創造と管理
第11章 機能別リーダーとしての地位を得る
第12章 グローバリゼーションに備える
第13章 プロダクトマネジメントの実情
第14章 プロダクトマネジメントの導入とプロダクトマネジャーの管理

もはやベンチャー企業であればCEOとも呼べそうな広範な領域、権限を感じさせる網羅性です。

現在声高に叫ばれているテーマ「学び続ける」「チームで最大効果を出す」などはカバーしていないようです。むしろ「これからのプロダクトマネジャーの教科書」として集まったメンバー執筆したいね、なんて話にもなりました。

こういった大きな会社と仕事をするときに、最初に気をつけることは何でしょうか。

部署横断チームを組むことや、意思決定できるメンバーを集めておく、などの勘所も共有されました。新しい製品を作る上でメンバー構成は成否に直結するという点には皆頷きました。


Harbard Business Reviewの論文を見てみる

まだ本文に入れません。笑

本書ではHarbard Business Review をはじめとする論文が多くの引用されています。参加者の一人が『プロダクト・インテグリティ すり合わせの製品開発力|Takahiro Fujimoto、Kim B. Clark』を紹介してくれました。

こちらの論文には内部統合性という言葉が出てきます。作りあげる製品像をチーム全体で同じようにイメージできている状態を理想と説いていますが(要確認)その面白い点は、内部統合性はFigmaで大いに実現しているよね、という話でした。製造業で語られた素晴らしいプロダクトの作り方を、ソフトウェアの世界ではクラウド上のデザインツールで実践している。この流れは必然のように思えます。

第1章 1.1重量級プロダクトマネジャー

この章は冒頭の「プロダクトマネジャーとは何か」でしっかり議論と把握ができたのでワークはせずにスキップします。

第1章 1.2計画立案のフレームワーク

会社のビジョンをもとに戦略を立て、実行するのがプロダクトマネジャーです。この戦略立案のためには根拠となる膨大な情報が必要です。市場分析、競合分析、パフォーマンス分析などあらゆる視点を持って戦略を立てられる企業体質があるかどうか、以下の企業の戦略IQを評価するチェックシートで確認せよ、とあります。これを1つずつ解釈しながら、戦略的な企業体質について理解を深めます。

第1章15ページプロダクト開発における企業戦略のチェックシート

15項目の1〜10番目を5点満点、11〜15を10点満点で評価すると、最大100点満点で企業戦略のレベルが評価できるのだそうです。一体誰が評価すべきなのかは疑問が残るものの一緒に読み進めます。

1.企業は将来どうなっていたいのかという長期的なビジョンを持っている。
多くのスタートアップでビジョンへの共感が大切と言われています。これは今でも問題なく受け入れられそうな項目です。ビジョン、ミッション、バリューを定義していない組織は一枚岩になれない、という話は内輪になりますが、Goodpatch土屋さんの組織崩壊の話にも新しいです。

2. 競合する、あるいは矛盾する計画が組織に蔓延しないように、戦略的ビジョンは簡潔に表現されている。
これは1で上げた、ビジョン、ミッションをきちんと言語化し、組織に浸透できていることと解釈しました。素晴らしいビジョンがあっても、それを組織内で共有できる言葉に落とされていなければ効果がありません。また小難しい計画ではなく、少数強固なKGI設定という意味にも捉えられそうです。

3.戦略的思考(多面的で制限がない)と戦略プラン(焦点が絞られていて詳細)が共存している
多くの選択肢を持った上で戦略を決定しているかどうか、と解釈しました。いわゆる鳥の目であらゆる可能性を模索した上での合理的な選択ができているか。プロダクトマネジャーは盲目になってはいけません。

4. 企業はビジョンを現在の経営資源に合うように制限するのではなく、野心的なビジョンを達成する為に経営資源を活用することに重点を置いている
売り上げはあくまで「目的」であり、「ビジョン」が先にあるべきと解釈します。

例えば新聞社であれば紙媒体や既存メディア構造にとらわれない「ジャーナリズムの拡大」のような野心的ビジョンを先行して柔軟に慣れていればこんなに停滞していないはずなのにね、という話も出ました。(自分ではありません)

5. アウトソーシングや子会社の売却、製品撤退などを実施する際、そのような決定が企業の能力に与える影響が考慮されている
安易な外注は内部に経験値が貯まらず、じわじわと力を失っていくという話になり、「めっちゃある〜」と共感する参加者。

「オフショアで作ったソフトウェアがメンテナンスできなくなる現場を多く見てきた」「アウトソーシングが常態化した結果、発注能力すらなくなっていき、提案依頼書も作れなくなる。コンペの資料も書けず、さらにコンサルタントを入れてお願いする状態に。。」など辛い経験談もちらほら。。

6. 買収を実施する際、企業のコア能力に与える影響が考慮されている
買収でうまく言った事例ってあるのかなという話に。事業譲渡は成功事例を聞きますが、買収後に吸収された組織がうまくいった例はなかなか耳に入ってきませんよね。生産業以上に人や組織体制に左右されるIT企業の買収は難しいのかもしれません。また戦略の選択肢にM&Aが入る点もプロダクトマネジャーの視座は高く、ミニCEOと書かれたあの付箋が的を射ていたと感じます。

7. 全社的にどの競合にフォーカスするのかが示されており、競合分析活動が浸透している
社員全員が競合を把握しており、それらと比べて自社の強み弱みをスラスラ答えられる状態が理想なのではと話しました。隅々まで浸透したその意識が戦略の徹底を促すのです。おそらく。

8.競合を模倣するのと同じくらいの(それよりも多くではない)頻度で、企業がイノベーションに取り組んでいる
競合の分析やある程度の模倣する点は合理性から考えて避けられません。けれどもいつも後追いになるのではなく、自社内でイノベーションを起こせるような体制にしておくべきだと解釈しました。自由な発想が受け入れられる雰囲気た土壌は心理的安全性にも通じます。

9. 各部署の主要メンバーは、戦略に影響を与える可能性のある市場動向に敏感である
これは参加者の情報収集の話になりました。「iOSエンジニアであれば新しいiPhoneが出たのに興味を持たない人は信用ならない」との声も。

UXデザイナーとして新しい案件が始まる時のキャッチアップは、内部状況(事業会社の強み弱み、状況の把握)外部状況(業界について)どちらもチェックを欠かさない。外部状況を知るには専門書を読むのは絶対だし、エキスパートインタビューやユーザーインタビューもよく利用する点は皆同意していました。

大企業ほどエキスパートが社内に存在することも多く、メンバーとしてアサインし、専門家の視点と情報量を獲得するという方法も聞かれました。

Slackチャネルの利用の話もあり、マークしたキーワードでエゴサして、見つけた記事やtwitterの投稿リンクを貼っているチームもあるよね、と。また提案の根拠となりそうな数値や事実情報だけを集めておくチャネルがあると後々便利なのだそうです。

10. 戦略的な計画は、年間のマーケティング計画を立案する際に重要な役割を果たしている
年間のマーケティング計画が想像しづらいメンバーたち。コトラーの言うマーケティングまで視野に入れればさらに広いぞ。。と困っていたら141ページに価格設定や流通、戦略を示すとありました。戦略的な計画はともかく、年間のマーケティング計画については製品によって想像するチャネルは大きく異なりそうです。ちょっと深掘りできず残念。

11. 現在の競争上の優位性を獲得するに至った能力やプロセスを正確に把握するために、過去の業績について研究を行なっている
すでに自社の製品が競合優位性を持っているとして、なぜ成功したかを分析しているかどうか。成長拡大期にあっても、その要因はなんだったのか振り返って把握すべきと解釈しました。

12. 製品のポートフォリオだけでなく、競争上の優位性のポートフォリオを作成しようとしている
製品のポートフォリオとは自社の製品ラインナップを指します(アメリカ市場ではこれ、日本市場ではこれ)。自社製品に限らず同ドメインの他社製品をも遡上に上げて客観視しつつ製品ポートフォリオを作れているかどうか。

本文中では「競走上」と記載されているが「競争上」の誤植っぽいですね。6刷りでも「競走上」になっていましたよ -> 翔泳社さん

13. 年次計画は、単に過去から現在までを未来に反映したというものではなく、戦略的ビジョンを達成するために次年度にやるべきことを記述したものである
今年はポテトとハンバーガーを売って順調に売り上げと店舗数を伸ばしました。だから来年も200店舗増やします!!というような根拠の乏しい前年踏襲/惰性の年次計画はダメだよね。成長は目的ではなく、最終的な野心的ビジョンの実現が先にあり、それを年次計画に落とすべきだと解釈しました。ごもっともであります。

14. 自社の主要なプロセスを、顧客に対して優れた価値を継続的に提供できるような戦略上の能力にまで高めようとしている
顧客体験を常にアップデートさせる仕組みができているか。たまたまヒットを出すのではなく、継続的にユーザーに価値ある製品を届け、整備し続ける体制/能力を持とうと解釈しました。研究開発に対して投資し続けることも含まれそう。

15. 新製品開発というのは、企業が顧客の欲しいものを、顧客が気づく前に知っていることを意味している
ことソフトウェアに関しては、市場に出して価値検証する進め方が広まっていますね。なので鵜呑みにできないかもという意見もありました。

ただ「顧客が気づく前に」の部分は有名なフォードの逸話「顧客に聞いたところで早い馬車が欲しいとしか言わない」くらいの意味とすれば、開発チームは自分たちの信じた価値を創造していると捉えて納得をしました。(たまに予想外の使われ方でヒットすることもあるけど)

-----

以上を採点していくと戦略的IQがわかるんだそうです。その網羅性と汎用性は現在でも通じるチェックリストと言えそうです。


1.3 戦略的な製品ビジョン

実例が登場するこのセクション、なんとインタビューが掲載されているポールバウムガードさんをLinkedInで見つけました。笑
今はGEではなくヘルスケア専門の会社で事業責任者として活躍されているよう。ただ本に登場した翌年、2007年にはGEを退職されており、デザイン思考に舵を切ったGEの組織改革で出て行ったのかも、、なんて鋭いツッコミもありました。(違っていたら申し訳ありません)


2時間の読み解く会を終えて

皆の感想を聞いてみました。

仕事の時はふんわり把握していた概念を、系統立てて考えるきっかけになった。
同じ本を読みつつ議論できたのは有意義だった。この本に限らず次回、次々回と続けていきたい。 
本を読むモチベーションが上がりました。Goodpatch Anywhereはいいなぁと思いました。次回も参加します!
自分も本を読むモチベーションが上がりました。昔との違いを感じる点も面白かった。zoomもFigmaもない時代に実践していたところから学べることもありそう。
さっき本を買ったばかりでドキドキしていた。ざっくり読んでわかった気になるが皆でワイワイ読めると理解が深まって良い。これぞソーシャルリーディングだね!


次回予定

もちろん第2、第3章も読み解いていきますが、次回はちょっと本を変えて「偉大な組織の最小抵抗経路」で実施予定です。

学習する組織で有名なピーターセンゲさんが序文も書いている本で、組織やリーダーシップについて書かれた本ではホットです。

ちなみに『学習する組織』やその中で語られるシステム思考などは個人的に深掘りしたい分野です。


マーケティングの名著であったり、他の本でも将来続けていきたい、有意義な時間でした。

長くなりましたが、また次回あればnote書きます。


それでは




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?