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菅原正博さんから学んだこと|日本広報学会・中四国部会 勉強会レポート

ネクストメディアの坂上北斗です。

2022年 3月 20日に、日本広報学会・中四国支部の勉強会を久しぶりに開催しました。

久しぶりに、皆さんで集まってコーポレート・コミュニケーションについて意見を交わせるという嬉しさと、今回の勉強会の副題である「故・菅原先生を偲ぶ会」の響きの寂しさとで複雑な気持ちでしたが、錚々たるメンバーにオンラインでご参加いただき、高知でも仕事でお世話になっている方にご参加いただくなど、記憶に残る会となりました。

勉強会の内容は、日本広報学会で理事を務められていた菅原正博先生のお人柄や研究内容などを、共同研究者である日本広報学会・理事の石橋陽さんと、中四国部会・部会長代行の島津さんを中心に、お話を伺っていくというものでした。

この note では、自分の振り返りと菅原さんへの感謝を込めて、勉強会の日の気持ちと決意を残しておきたいと思います。

菅原さんはお会いしたときすでに 80歳。年齢も離れていますし、実績や肩書からすると「先生」とお呼びするのが良いのかもしれませんが、僕は「菅原さん」と呼ばせていただいていましたので、以下「菅原さん」と記載します。ご本人も「高知にお友だちができた」と仰ってくださって、MBAを取ったみたいに嬉しかったのを昨日のことのように覚えています。

菅原さんに教わったこと①「マーケティング」と「コーポレート・コミュニケーション」

菅原さんは、もともとマーケティングの研究者で、そこからアパレル業界のコンサルタントに転じ、さらに晩年はマーケティングからコーポレート・コミュニケーションに研究対象を移し、直近では AI に強い関心を寄せ、研究を続けながら、現役の大学教員でもありました。

僕がいまの仕事を、ECサイトの運用支援から始めたこともあり、当初の関心はマーケティングでした。しかし、インターネットとスマートフォンが普及し、さらには SNS で個人が情報発信を自由にできる時代にあって、営業活動にしても、広告や広報にしても、組織としてのブランドの一貫性を保つために、社内の組織構成員や、直接商品を購入してくれるお客さまだけでなく、その周囲にいるステークホルダーとの関係をつくる必要性を強く感じていました。

ですから、主に見込み客を開拓し売上のトップラインを伸ばすことが求められるマーケティングの世界から、組織としてさまざまなステークホルダーとの関係をつくるコーポレート・コミュニケーションの世界へ研究対象を移した(広げた)菅原さんとは、初めてお会いしたときから意気投合でき、その後もチャットなどを通じて意見交換をしたり、アドバイスをいただける関係となりました。

広義のマーケティングの考え方とコーポレート・コミュニケーション(広義の広報)の考え方は共通項も多く、マーケティングは広報の要素や役割を取り込んでいっており、また広報もマーケティングの機能を内包するように変化している。そんな話を肴に一緒にお酒を飲むのは何より楽しい時間でした。

学会の研究事例は大企業のものが多く、そもそも非上場で対象マーケットが小さい中小企業は社会とコミュニケーションをするだとか、ステークホルダーだとかを日頃から意識している会社は少ないように思います。

ですから、中小零細企業で社内に「広報部」がある会社も少ない印象です。

でも、コーポレート・コミュニケーションにおいて、広報の役割は「経営者の考えを、わかりやすく翻訳して内外に発信していく」ことです。

また、社内の意思統一や組織文化の醸成(インナー・コミュニケーション)の重要性も説かれています。

それなら、トップの意思決定次第で、組織の末端までスピーディに情報を伝えて行動を起こせる小さなチームのほうが有利ではないでしょうか。

そこで、日本広報学会が定義しているコーポレート・コミュニケーションの図に少し書き加えて、インナー・コミュニケーションの重要性をクライアント企業さんと一緒に考えることにしました。

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(多くの中小企業は非上場で「IR」についてはピンとこないと考えて、IRは外しています) 

結果、Webサイトや広告、パンフレットなどお客さま向けのコミュニケーションツールを制作する仕事から、クライアント企業の社内の体制を一緒に整えていく仕事まで業務領域が広がりました。

菅原さんとの出会いで、自分の視座が上がり、仕事の意義や役割もアップデートできたと感じています。

菅原さんに教わったこと②「実務家教員」という生き方

菅原さんは、旅立ちの直前まで専門職大学で教鞭をとられていました。そして、僕にもマーケティングやコーポレート・コミュニケーションなど「ビジネス」を教える学校における「実務家教員」の重要性を説いてくださいました。

ビジネスの環境は刻一刻と変化しているため、ビジネス現場から離れて、研究室に閉じこもってしまっては「いま必要な知識」を教えることはできない。いっぽうで、現場で経験と勘のみで培ったノウハウは、組織を超えた役立つ知恵として多くの人が学べるものにはならない。

だから、行う側はちょっと大変ではあるのですが、ビジネス現場とアカデミックな研究の両輪を持つ存在、現場での実装力・実行力と、研究者・教育者として学問やノウハウとして学べる知識にする力の 2 つをもつ実務家教員が必要だと。

セミナー登壇や、高校・大学での特別講義の声がけをいただくようになっていた僕は、この働き方が自分の学習プロセスと重なる部分もあり、とても魅力的で価値あるものに思えました。

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毎週行っている合同勉強会も、ビジネス現場で実行したことを言語化して、自分以外の誰かに共有する訓練として行っている面もあります。

菅原さんの訃報を聞いたとき、僕はある専門学校さんから外部講師のお話をいただいて、実務家教員の一歩を踏み出そうとしていたときでした。

菅原さんに直接ご報告して、指導をいただきたかったのですが、叶わずじまいとなってしまいました。

菅原さんの命日、それは奇しくも僕の誕生日でした。

勝手に、バトンを受け取ったつもりになって、2 つの学びを実践していきたいと思っています。

終わりに:和製ドラッカーが体現していた「好奇心の人は老いない」という事実

菅原さんは、日本のドラッカーのような人だなと改めて思います。歳を重ねてますます好奇心は旺盛で、海外の文献を大量に読み漁っていたり、朝早くからSNSで連絡をしてきたり、夜行バスに飛び乗ってアポ無し訪問をしたり、お酒を飲んで豪快に語り「うぇっへっへ」と笑う、エネルギーにあふれている方でした。

頭の回転が恐ろしく早く、どんな質問にも理路整然と回答し、鋭い角度から質問が飛んできます。菅原さんには「老い」や「ボケ」という言葉は無縁のように思えました。

好奇心を持ち続け、学び続け、自分の考えをアップデートし続け、発信し続ける。そんな人ばかりなら、高齢化社会はこんなに問題になってないのかもしれません。

「こんなおじいさんになりたいな」と、人生の目標まで教えてくださった菅原さん。

"お友だち" で在り続けられるように、これからも精進していきたいと思います。

菅原さん、ありがとうございました!

エピソードを話してくださった日本広報学会の皆さん、ありがとうございました!

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