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宮島未奈 著 『成瀬は天下を取りにいく』

ポイント

1.爽快感メインのお話
  完璧でちょっとおかしな主人公とその友人という小説。 よくあるスタイルだが、世の中に忖度しない、自分のやりたいことをやる、という主人公の爽快感に注目した作品。ミステリーやSF の要素といった+αの部分を省くことで、分かりやすく、かつ現実的な爽快感を生み出している。

2.フィクション過ぎないリアリティ
  「ときめき江州音頭」にて主人公成瀬の人間臭い部分が出てくることで、あちら側の話ではなく、 こちら側の読者に共感と勇気を与える。私は島崎かもしれないし、行動できない成瀬かもしれない。そして私にも島崎がいてくれるのだ、という、全方位に向けた読みやすさ。


今日の部室

※会話の勢いを再現するため、本文中に登場する作家名は敬称略になっています。ご了承ください。


マノ  漫才やりましょう!

副部長 なんでやねん。

マノ  いやいや早いし。

副部長 ゼゼカラの影響、受けまくりじゃない。

マノ  いや、あれは受けますよ。

副部長 青春小説ど真ん中って感じ。

マノ  ただ、読んでて思ったのが、なんか、絶対どこかで読んだみたいな感じがあったんですが。

副部長 やっぱりそういう感じはあるよね。いろんなところのレビューを読んでみても、概ね高評価で、成瀬中毒みたいな感じなんだけども、いくつかの低評価に、よくあるあれじゃないか、というのがあったかな。

マノ  ですよね。私も、ハルヒとか、陣内さんとか、そんなイメージはありました。

副部長 ああ、チルドレン。あとは東野圭吾のガリレオとか。わたしも陣内さんを思い出したんだけど、そこで止まってしまっては何も始まらないので、ちょっと考えてみたわけよ。

マノ  ふむふむ。で、いかがでした。

副部長 完璧でちょっとおかしな主人公とその友人、というスタイルは、これはもう伝統芸能で、なんだったらコナンドイルとかもそれじゃない。大切なのは、それがメインなのか、プラスアルファなのか、というところじゃないかと。

マノ  というと。

副部長 シャーロックホームズとか、ガリレオとか、チルドレンとかはミステリーがメインにあって、そのキャラクターのプラスアルファに変人だけどカッコいいキャラクターがあって、ハルヒだったらそれにSF的なものがついたりして、まあ、ハルヒはキャラクター博物館的なところもあるので、それはまた今度で、なので、成瀬はメインにキャラクターがいるという感じかなと。

マノ  あー、なるほど。読者は直接成瀬を摂取するから、爽快感がガツンと来る感じですね。確かにチルドレンとかはミステリーメインなので、話のどんでん返し的なスパイスになってたりするかも。

副部長 そうなの。なので、そもそもミステリー読まない人にとっては、伊坂幸太郎や東野圭吾ってだけで読まないかもしれないし、なんだったら、シャーロックホームズは古すぎるし。

マノ  そう考えると、本屋大賞ってのも、どっちかというと本読んでる人向けっていうわけでもないですよね。

副部長 そうそう。これはもう、成瀬と島崎を味わうという感じなんじゃないかと。ただ、その完璧なだけじゃなくて、「ときめき江州音頭」で成瀬の人間臭さが出てくることで、実はあちら側の話じゃなくて、こちら側の話になるのが良いのかも。勇気を与える感じ。

マノ  成瀬もいいけど、私は島崎になりたい、って人もいますよね。

副部長 そうそう。あとは、私にも島崎がいるってのを気付かせてくれるのもあるかも。

マノ  まあ、副部長は成瀬側ですけどね。

副部長 で、その成瀬・島崎問題なんですよ。

マノ  お、急に始まった。なんですか。

副部長 なんかさ、いま、わたしは成瀬側だって言ったじゃない。そうなの。わかるのよ。ただ、自分が何とか成瀬側でやっていけるのは島崎がいたからなんじゃないかと思ってね。それはとても幸運なことなんじゃないかと思ったのね。

マノ  成瀬ひとりだと孤立しちゃいますよね。まあ、成瀬は気にしないだろうけど、現実にはなかなか難しいかもです。

副部長 そうなんだよねえ。なんかそれ考えたら、暗くなっちゃって。

マノ  ええ。なんでふにゃふにゃになってんですか。副部長、こういうところポンコツですよね。

副部長 で、それについてちょっと話したい事がある!

というところで、長くなってきたので、次回に続きます。


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