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我が湯治先の杖立温泉記


#至福の温泉

 タグ『#至福の温泉』というものを見つけたので湯治に行った時の杖立温泉記でも書くかと思いつく。
 まだnoteになれる為の練習なので気楽に読んでくれると嬉しい。
 さて、杖立温泉なのだが熊本県阿蘇郡小国町にあるのだが、大分県との県境なので宿の一部には大分県に建っているなんて事も。
 近年、黒川温泉の人気が高くなってきた中、スルーされる事が多い温泉地でもある。
 とはいえ、この温泉の歴史はかなり古い。
 古くは神功皇后の時代から湧いていたらしく、名前の由来である杖立にはかの弘法大師空海が絡むというのだから、その歴史の古さが分かろうというもの。
 空海はこの地の事をこんな歌で詠んだ。

 湯に入りて 病なおれば すがりてし 杖立ておいて 帰る諸人
                         — 弘法大師

 杖を使ってやってきた病人が湯治の結果杖を置いて帰ったという歌である。効能を知らしめるのにこれ以上の歌はない。
 他にも空海がこの地に杖を立てたら湯が湧いたなんて説もあったりする。
 その効能から古くから湯治客でにぎわい、九州の奥座敷として繁栄した温泉である。

 この温泉に行く場合基本ルートは二つある。
 一つは大分自動車道日田ICから国道212号を南下するケース。
 もう一つは阿蘇山から国道212号を北上するケースである。
 今回の私のルートは阿蘇山から北上するルートである。
 深夜、福岡を出発して九州自動車道で熊本ICまで南下。
 その後国道57号を東に向かい阿蘇山へ。
 本来ならば国道212号を北上して大観峰へという所だが、寄り道とばかり国道57号を東に進み大分県竹田市へ。
 そこから国道442号を利用して国道212号との合流点である小国町へ向かう。
 なお、このルートだと黒川温泉を横切るので黒川温泉の賑わいを少し眺める事になる。
 団体客から個人客へと旅行が移り変わった現在、黒川温泉の建物は小ぶりの秘境感が漂うのに対し、黒川温泉の建物は良くも悪くも大きく時が昭和で止まっているような感じを受ける。
 とはいえ、私はこの止まった時間が好きだからこそここと湯治先に選んだのである。

 湯治というのは本来長期間行うものであり、私の旅みたいに一泊二日だと効果というものはリラックス効果ぐらいしかないのだが、それでもしないよりはましである。
 杖立温泉に入るには杖立トンネルの前で曲がる事になる。この杖立トンネルのおかげで多くの車が杖立温泉をスルーすることになったのだが、温泉に入ると川にかけられた多くの鯉のぼりがお出迎えする。
 この鯉のぼりを飾ったのも杖立温泉が最初だという。
 あちこちで湯けむりが上がっており、ここでは蒸気を利用した蒸し料理が名物の一つになっている。

 時刻は夕方。宿に入り夕食前に早速湯に入る。
 昨今の情勢で共同浴場が閉まっていたのが残念だが、私が泊まった宿の温泉は24時間入る事ができるので、これ幸いと湯につかる事にした。
 湯そのものはかなり熱い。
 そして、蒸しサウナがついているのが嬉しい。
 たっぷりと汗をかいたので夕食時にしっかりと水分を補給する。
 その後、原稿の作業に入って寝る前に再度風呂に。
 私が泊まった宿は実に古く、気分は昭和の文豪のごとし。
 昭和の文豪ならはここで酒を片手に煙草をふかしながら原稿という所なのだろうが、今は平成すら終わり時は令和。
 酒も煙草もしない私はコンビニ(24時間でない上にチェーン店でもない)で買った紅茶のペットボトルから湯呑に紅茶を注ぎつつノートパソコンを叩く。
 深夜一時。なんとか作業が終わり寝る前に再度湯に。こうやって好き勝手に湯に入れるのは実に嬉しい。
 おもしろいもので、広い湯船で何も考えずに湯につかると原稿のアイデアがひらめくのだ。
 なるほど。世の文豪が温泉地で缶詰になったのはこれかと作家になって理解する。
 とはいえ、良い事ばかりではない。
 古い宿だからこそ、使用できる電源に限りがある事がある。
 今の世の中は携帯複数持ちで、ノートパソコンなんて使うならばコンセントがいくらあっても足りない訳で。
 携帯の充電とノートのバッテリー充電は、湯に入る時や寝る前にちゃんと気をつけておかないといけない。
 私は車に積み込んでいたキャンプ用ポータブル電源を使って解決した。
 車キャンプの動画にはまって、非常時名目に買って積んでいたのだがこんな所で役に立つとはと思ったのは内緒だ。
 あと、杖立温泉は山間部の宿なので温度差が結構ある。
 私は寝相が悪くて浴衣がはだける人なのでパジャマを持ってきてその上から浴衣を着て寝る事にした。

 起床して朝食。
 チェックアウトは10時なので、うまくゆけば朝湯を楽しむことができる。
 もちろん私は楽しんだ。 
 という訳で、朝湯を浴びてから宿を出る。
 大体駐車場が用意されているし、無料駐車場もあるので車の客にも優しいのだが、平日の朝10時ともなると通勤も終わっており車は私だけだった。
 そんな私の車を多くの鯉のぼりたちが空を泳ぎながら見送ってくれた。

 杖立の 旅人送る 鯉のぼり 去りし車の 音はかろやか
                    -二日市とふろう  



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