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写真小説 SUNINESS

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狸小路エリが平野遼の作品に出合い、最初は難解な抽象画に抵抗しながらも次第に影響を受け論文に取り組むことになる過程を描きます。それは物語の悲劇が彼女自身の過ちから起こったものばかり… もっと読む
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#平野遼

SUNNINESS (1)   「だから平野遼を評論する」

はじめて狸小路エリと口をきいたのは、新学期がはじまって何日かたった頃だと思う。いや、夏休…

SUNNINESS(2) 「だから平野遼を評論する」

そう、それは夏の暑さが強烈に残る季節で、その馬鹿げた暑さに抗するには、イーゼルに向かうほ…

SUNNINESS(3) 「だから平野遼を評論する」

さて、鉛筆を削るだけの散漫な待機時間に終わりが近づくと、私は茨の道を進む覚悟でその時を迎…

SUNNINESS(4) 「だから平野遼を評論する」

医療をともなう彼の救援行為はともかくとして、私が予備校時代に宗教にかぶれたのは、この、人…

SUNNINESS(5) 「だから平野遼を評論する」

アトリエに戻ったが、私以外の人はいなかった。長い夏休みが終わり、午後のうちでも誰かと共に…

SUNNINESS (10) 「だから平野遼を評論する」

食事が終わると私はエリにコーヒーをごちそうした。マメの苦みが出ないように短時間で抽出した…

SUNNINESS (11) 「だから平野遼を評論する」

時計は二時を指していた。コーヒーの後の長い休みは、体も心も食物の消化にとりかかるだけだった。私は少し眠くなってきた。しかし、そろそろ学校に行く支度をしようかと腰を上げた。エリも壁に寄ったなり大きく伸びをした。昼間はまだ太陽がきつく照り付けてはいたが、今は秋の穏やかな光のにこやかさが目の前で波のように動く緑の中に没していた。私はタバコをくわえながら上着を羽織った。大家さん宅の離れからは犬の吠え声が聞こえていた。 すると、さっきまで晴れていた空が曇りだした。と思ったら、外から煙の

SUNNINESS (12) 「だから平野遼を評論する」

しかし、財布の中身を確認しようとして、ポケットから焼き肉屋のマッチを落とした瞬間、二十年…

SUNNINESS (13) 「だから平野遼を評論する」

そうだ。あの時も辛かった。あれは、Jリーグが開幕した年だった。どんなサッカーをやるのか、…

SUNNINESS (14) 「だから平野遼を評論する」

「ねぇ、パスカルって何で出来ているの?」とエリは尋ねてきた。彼女はところどころ常識のない…