水天宮前 19:02

あの駅に行った。あなたのいない、あの駅に。
新しい服を、バッグを、靴を身につけて行った。少しでも気持ちが明るくなるような、バフアイテムを装着して行った。

あなたのいないあの街はどこかわたしを受け入れていないみたいだった。
あなたがいつも待っていた場所は工事中で、時の流れを感じさせた。そこにいたあなたの幻を見ることさえできなかった。

アルコールを、そして薬を飲まずにはいられなかった。それを買うための場所でさえあなたの記憶があって、わたしは悲しくてどうしようもなかった。

ちょうどそのとき、あなたからのメッセージがきた。ああ、あなたはいつでもわたしを救ってくれるんだね。あなたはあいかわらずわたしには眩しすぎるようだった。

わたしはあなたでない誰かと待ち合わせて、あなたでない誰かと時を過ごして、あなたでない誰かと、あなたと一緒に行った店に行った。

あなたとの最後の日を思い出す。一緒にリムジンに乗った。一緒の飛行機には乗れなかった。
あの家での最後の晩餐を思い出す。あなたは枝豆を食べさせてくれた。あなたはわたしにキスをして、それで、それで……

わたしは溢れ出る悲しみを抑えることができなかった。あるいはアルコールがそうさせたのかもしれない。真偽は定かではないが、ともかく、この街にはあなたとの思い出が多すぎた。道を歩くたび、わたしは脳内であなたの言葉を反芻した。確かに抜け出せない孤独がそこにはあった。
そして今日、わたしの腕にあなたがいないこと、それがなによりつらく感じた。

あなたからたくさんメッセージが届いてうれしかったから、今日はそれでなんとか生き延びた。
ふたりで思い出を共有しているみたいだった。わたしに一人旅の経験はないけど、ひとりの旅行で写真を送る相手がわたしであることがなんだか特別かのようでうれしいと思った。あなたの近況を知ることができてうれしい。

あなたはわたしに写真を送って、そのあとにインスタにストーリーをあげていた。わたしの写真にはうつっていたものがどかされていて、それはわたしへの信頼なのかなと思った。

会いたいよ、わたしのミューズ。
あなたがいないこの季節を過ごすのはつらすぎるから。

会ったときにはまるで再会を待ち望んでいたかのようにわたしを抱きしめて、暖かい手でわたしを包んで、それだけでいいから、そのまま死なせて。あなたがわたしの近くに存在していたことが、今不在をより意識させてくる。出会わなければよかったとは思わないよ。でも、失いたくなかった。

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