先進校視察#6 千代田区立麹町中学校
2018年11月30日。
千代田区立麹町中学校といえば、現在教育業界では話題の学校。校長工藤勇一先生が、眼を見張るような改革で注目されている学校です。
そんな麹町中学校にお邪魔して工藤先生にお話を伺いました。
麹町中学校といえば「定期テストの廃止」「固定担任制廃止」など学校の常識をぶっこわす学校として有名です。
お忙しい中かなり無理をいってお邪魔したこの日、麹町中学校を視察にきた教員は30人ほど。北海道から宮城、福島、静岡といたるところから集まっています。
まず驚くのはその立地。周囲には名門ホテルや大使館、学区内には議員宿舎があるという、まさに東京の中心。
施設も桁違い。
巨大な6階建てのビルの各階には体育館、コンピュータ室、カフェテリア、屋上庭園、プールと信じられない豪華さ。
けれでももっと桁違いなのは、校長の工藤勇一先生。
工藤先生の著書『学校の「当たり前」をやめた』がベストセラーになっています。
有名な「定期テストの廃止」。そのからくりは以下のよう。
宿題というものはわかるところしかやってこない。そしてテストはできるところしか解答しない。これが本当に学びなのか?
麹町中学校では定期テストを廃止し、単元テストに変更。つまり小さなテストがずっと続きます。このテストは1度だけ再テストが可能。生徒は再テストで点数を上げたくて、自分ができないところをやってきます。宿題がないのは、この自分で勉強する時間と意識をつくるため。
こうして宿題、定期テストをやめたのに成績があがる、という結果になっているのです。
もう一つ特徴は「固定担任制廃止」。
工藤先生は、医療の世界がチームで患者に対応しているところに注目しました。
教員はしばしばスーパーティーチャーを目指してしまうもの。一人のスーパーティーチャーの影には、ハズレとされた教員の存在が。この教員同士のライバル心は「生徒を見る」という本来の教育の形から遠ざけ、大人同士の名誉心の競い合いを生んでしまいます。
そこで固定担任制をやめ、チームで教育。面談も、生徒や保護者が教員を逆指名。意図的、計画的にチームで対応し、生徒を全員で見るようにしたということなのです。
このような改革のキーワードは「自律」。日本の従来の教育は自律を削ぐことばかりが行われています。本来は一人ひとりを大切にする、みんな違っていいはず。
そして学校の本来の目的は「人が社会の中でよりよく生きていける」こと。ところが現実には「カリキュラムをこなすこと」「学習指導要領をこなすこと」が目的となってしまっています。
そこでポイント
教師の立場から 1:何を教えて(カリキュラム)2:どう教えるか(教え方)
生徒の立場から 1:何を学んで 2:どう学ぶか
つまり従来の受動的な授業(ティーチング)、学びから脱却し、主体的で学びを楽しむ(コーチング)で自律すべきということ。
「そのために手段の目的化」をスクラップ。
まず目標があり、それを達成するために手段があるべき。だから宿題を出すことが目的にしない。運動会は楽しむことが目標のはず。だから自由な体育祭にする。学級対抗はやめ、整列をやめ、統制をしない。それを生徒が決めていく。
服装や頭髪はどうでもいいこと。海外は問題になりません。つまりこれは教育の本質ではないということ。どうでもいいことを生徒にどうでもいいと伝えることが大切。
こうしてスクラップをガンガン行い、そして今必要な新しい教育を取り入れます。例えば大学生によるスキルアップ研修など。
高度経済成長期に必要だった「忍耐」「礼儀」「協力」などは古くなり、現在では「起業・転職できる力(自分で考え、自分で行動できる自律)」が求められています。
このような教育を公立中学校が進めている現実。
あきらかにこのムーブメントは日本中に広がる可能性を感じました。