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地方公立高校の休校対策 VOL.10 私の休校対策のモデルはインドネシア

以前からインドネシアの「SDH(ディアンハラパン校)という世界でも最先端の学校がある、という情報をお伝えしてきました。

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今回、本校は地方公立高校ではいち早く時間割通りの授業動画配信システムを立ち上げました。

そのシステムを構築する上で、私の中でモデルとなったのがインドネシアのSDHの休校対策でした。

SDHとは

「世界の変革者になるために学生を変革する

ディアン・ハラパン学校は、子供たちにキリスト教教育を受けさせたい家庭のために、キリスト教教育を提供する国のカリキュラムを採用する学校です。ディアンとは「光を放つ装置」という意味で、教育におけるインドネシアの未来の希望と、光の源として、ディアン・ハラパン学校を構想しています。」(学校HPを翻訳)

以前の記事から

以前から交流させていただいているSDH。大学院時代からのインドネシア人の友人夫妻のお子さんたちも通っている学校です。

また2019年12月の掛川城プロジェクションマッピングでもコラボをして一緒に作品を作りました。

SDHの休校対策

実は3月中旬にインドネシアに行き、インドネシアの学校訪問をして交流する計画をしていました。

2月末段階ではインドネシアの新型コロナウィルスの発症数はゼロ。
しかし2月末にはSDHは生徒・保護者に次のような通達を出していました。

中国や新型コロナウィルスが流行っている国から来た、もしくは帰ってきた者、生徒、両親、親戚、教員は、14日の間、学校に立ち寄らないようにしてください。

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対応が素早い・・・。

SDHの先生と連絡をとると、学校訪問は様子をみて決めたいとのこと。

3月19日から日本を出発する予定でしたが、SDHはあっという間に3月16日(月)から休校。

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インドネシア国内の発症者が出だしたとはいえ、学校があるチカランには発症者がいないのに休校、という決断の早さには驚きました。

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そして私もインドネシア訪問を諦めました。

SDHの具体的な休校対策は以下の通り。

3月16日 時間割通りE-learningスタート。

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朝の7:00の礼拝からスタートし、15:20まで通常通りのスケジュール。10コマをこなします。

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          (SDHのInstagram)

Office365とEdmodoを使って課題を指示。

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生徒は動画や画像、テキストで返信。

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音楽は歌を歌い動画で学校に提出。

具体的にはOne note、 One drive、Edmodo、動画配信などで来ます。

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(動画配信された授業。)

インドネシアのお菓子について調べて発表するといった調べ学習もあります。(中1)

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美術の課題はバティック(インドネシアの民族衣装)をテーマに紙で制作。画像にして提出。

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必要に応じて双方向のテレビ会議のオンライン授業も。

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SDHのInstagramに休校時の家庭での学びの様子があげられていました。

英語はタブレットなどを使ってプレゼン動画をとり、提出。

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幼稚園から小学校までは全て英語を使って授業をうけているので、レベルは非常に高いです。

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卒業のための統一国家試験があるため、中高はインドネシア語で授業を行っています。(小学校も卒業試験あり。小六、中3、高3の2学期は卒業試験のためだけに勉強します)

卒業試験はPCで全国同時実施(ペーパーテスト型の知識を問う問題、プロジェクト学習の論文、ポートフォリオ。論文はルーブリックで採点)


3月16日から1ヶ月以上もこのような休校対策が行われていました。

このようなSDHの素早くシステマチックな休校対策の様子を聞いていたため、本校の休校対策のモデルとしてイメージしながら活用できました。

次のステージへ

そして4月12日。

SDHは、休校の長期化に伴ってより進化していました。 

テレビチャンネルである TVRI Nationalと提携して学習動画配信をスタート。プロの作る教材で学習をしています。

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5月1日まで休校予定でしたが、現在も延長されています。

インドネシアの教育改革

SDHは私立大学付属の学校なので、特別なのか。

高校の国定の卒業試験にプロジェクト型学習が義務付けられているので、すべての学校でPBL(プロジェクト型学習)が行われています。

そして卒業試験や大学入試は全国統一試験をPCで行っています。(ほぼすべての学校でICTの活用が可能)

また、現在新しい大臣が、すべての学校をSDHのような学習にするように教育改革を行っています。

その大臣はナディム・マカリム氏。

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「1984年生まれのナディム氏は米ハーバード大学経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得後、2010年にゴジェックを創業した。配車・ライドシェアから、これらを利用した配送サービス、料理の出前サービス、それに電子決済サービスなどを相次ぎ展開し、ナディム氏は創業から10年もたたずしてゴジェックを世界有数のスタートアップに育てた。その評価額は100億ドル(約1兆900億円)と、世界で20社前後しかないデカコーン(評価額100億ドル以上の未上場企業)の一角を占める。」(日経ビジネスHPyori)

彼はGojecの開発者です。

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Gojecとは、インドネシア版のUberのようなもの。

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「ゴジェックのライドシェア・配車サービスには200万人余りのドライバーが登録し、アプリのダウンロード数は1億3000万回を超える。公共交通機関が未発達のインドネシアにおいて、既にゴジェックは「国民の足」として定着している。さらに同社が手掛ける決済サービス「ゴーペイ」は銀行口座を持たない人々にも現金に代わる新しい決済手段を提供した。その利用者の数は約1000万人に上ると言われる。「ゴジェックは(規模、影響力ともに大きくない)日本のスタートアップ企業の目線ではもはや捉えられない。人々の生活を支える巨大インフラ企業とみるべきだ」(日経ビジネスHPより)

ハーバードを出身の35歳のこのやりてITビジネスマンが、教育改革に本格的に乗り出しています。

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「ナディム氏は早速、5千万人の児童・生徒を対象に、IT(情報技術)教育などを充実させる考えを示した。ジョコ氏は「産業界で役立つ人材育成の突破口を作ってほしい」として、教育機関と産業界の懸け橋としての役割も期待するとした。・・・ナディム氏は23日、従業員に宛てた電子メールで、ゴジェックが配車などで人々の生活を改善してきたことに触れ、「インドネシアが(ゴジェックにいるような)高度な人材をもっと生み出すためには教育システムを変える必要がある」と入閣の理由を述べた。」(日本経済新聞より)
日本経済新聞はさらに次のように指摘します。

「インドネシアの労働人口のうち、最終学歴が小学校卒以下の人が約4割で、中学校卒以下も合わせれば約6割に達する。産業界からは「即戦力として使える人材が少ない」(日系企業)といった不満が出ていて、海外からの投資が周辺国に流れる一因となっている。」

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ただ現地の友人の教育改革への期待感は、もっと上の次元のものを感じさせます。

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ただ単に先進国に並び立つ人材を作る、というわけではないようです。

また単にITのエンジニアを育成するわけでもない。


見ている先は先進国ではなさそう。

インドネシアの生徒たちが未来の世界で活躍するためにはどのような新しい教育が必要なのか、という未来の教育への道程をイメージしているようです。

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現在では確かにSDHはインドネシアでは群を抜いている世界レベルの学校ですが、このナディム氏の改革が実れば、すべての学校がSDHのようになるのも時間の問題なのかもしれません。

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新型コロナウィルスによる休校により、日本でもAfterコロナの時代の教育が語られ始めた昨今。

Afterコロナ時代の新しい教育は、日本だけを見ているようでは世界から取り残されていきそうです。

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