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夢ではない実感|創世の竪琴・その22
グナルーシの葬儀も無事終え、渚は村長の家の居間で1人じっと考えていた。
本当にこれは夢ではないらしい事、ここに来た原因、これからすべき事など。
「ああ、もうっ!考えたってわからないわ!下手な考え休むに似たりだわっ!」
「何を1人でわめいているんだ?」
奥で村長と話していたイルが入って来た。
「ああ、イル、で、話は済んだの?黒の森にはいつ出発するの?」
「その事なんだけどな。」
「よっ!」
イルに続いて大剣を背に背負った男が入ってきた。
その男には渚は見覚えがあった。
「確か、あなた・・・ギーム。」
思い出したと同時に、『物』扱いされたことが鮮明に蘇り、ギームを見る渚の目は自然ときついものとなっていた。
「おい、おい、そんなに睨む事ないだろ?」
「何の用なの?」
「相変わらずきっつい性格でやんの。」
「悪かったわね、きつくて!」
ギームは肩をすくめるとイルを見た。
「渚、これから一緒に黒の森まで行くんだ。そんなに喧嘩腰じゃ・・・。」
「ええーっ!何故?私とイルだけでいいじゃない?」
「黒の森はモンスターばかりじゃなく、凶暴な野獣もいっぱいいるんだ。・・」
「で、この俺様が助っ人ってわけさ。
お前らじゃ、ろくな武器も扱えやしないからな。
まあ、バンバン倒してやるから安心しな。
食料とか重い荷物も持ってやるしさ。」
「ふ・・・ふ~ん。」
確かに戦士が必要なのかもしれない、と渚はゲームを想定して考えていた。
「まっ、仲良くいこうぜ。渚ちゃん!」
ギームが渚の肩を抱こうとした直前、イルが短剣をギームの目の前に突き出しそれを止めた。
「いいか、渚にちょっとでも触れてみろ!ただじゃおかないからな!」
「ちょ、ちょっと、イル、どっちが喧嘩腰なのよ?」
大男のギームに抱きすくめられなくてすんだのはいいが、少しやり過ぎだとも思えた。
もっとも悪い気はしないでもなかった・・・。
「腕はたつからな。
それに村長に言われた手前、断れなかったんだ。
それでなきゃ、頼むもんか、こんな女好き。」
「へ?」
「イル、渚ちゃんが警戒しちゃうだろ?
誤解を招くような事は言わないでくれよ。」
イルの言葉に目を丸くして彼を見た私に、多少焦りも見せながら、口を尖らせてギームはイルに抗議する。
「うるせーな!本当の事だろ?
いいか、渚、俺の側を離れるなよ!
こいつには気をつけろ!」
「え・・・・・え、ええ。」
「イルだってわかんねーぞ!」
(う・・・・こ、こいつらは!)
睨み会っている2人を見て渚は頭が痛くなってきた。
(とにかく、どっちも要注意ってわけね!
ああ、さっさと魔導士を倒して元の世界に帰ろう!
倒しちゃえば帰れるだろうから・・・多分そうよね、ロープレならそうだもん!)
自信は全くなかったが、そうでも思わなければ何も手につきそうもない。
「2人とも、渚さんが困ってしまってるでしょ!いいかげんになさい!」
村長と一緒に部屋に入ってきた夫人のカーラがそんな2人を諌めた。
「君達だけが頼りなんだ。頼んだぞ!」
「はい、村長、このギールム、渚と共に必ずや魔導士を倒してきます!」
村長の前に立つと、わざとらしくギームは直立不動の姿勢を取った。
「勝手に言ってろ!渚、行くぞ!」
イルはそんなギームをちらっと見、渚の腕をぐいっと掴むと、さっさと部屋をでた。
「ちょ、ちょっと待って・・・・そ、村長さん、カーラさん、行ってきます。」
カーラと少し話をしたかった渚だが、イルはそんな事はさせてくれないムード。
ぶすっと不機嫌極まりない顔をしてどんどん歩いていく。
渚は慌てて村長夫妻に挨拶をすると、引っ張られるようにして家を出た。
「ちょ、ちょっと、イル・・・そんなにきつく掴んでちゃ痛いわよ!」
「遅れるなよ!」
渚の腕を離したイルはぶっきらぼうにそう言うと歩を進めた。
「ねぇ、イル、どのくらいかかるの、黒の森まで?」
「そうだな・・・今日はイルの山小屋までで暗くなっちまうから、今晩は泊まって、明日の朝出掛けるとして・・・・
まぁ、夕方には黒の森の吊り橋には着くだろうな。
俺たちだけなら夜行で行っちまうが、渚ちゃんには、ちと無理だろうからな。」
いつのまにか追いついたのか、ギームがすぐ後ろから口を挟んだ。
「全くよりによって俺たちの村の近くになんかに現れやがって・・・ったく!」
ぶつぶつ独り言を言うギームをちらっと見ただけで、イルは何も言わずさっさと歩き、渚は遅れないように急ぎ足でイルについて行く。
そう、ギームよりは幾分イルの方が安全と渚は判断したからだ。
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