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『虐待児の詩』 赤いランドセル

「赤いランドセル」


さくら 舞う春 入学式

小学校 新一年生

みんな母親に連れられて来ていた

たぶん 僕の母も来ていたのだろうけど・・
記憶に残っていない・・・帰りは独りだった

ただ 同じクラスの友だちの母親が来ていたことは
はっきりと覚えている

そいつは 担任の先生が席に着くように言うまで
母親にべったり寄り添って離れようとしなかった

「こいつは幼稚園児か みっともねえ・・
 早く座れよ ばぁーか・・」
みたいなことを思って眺めていた

普通に考えれば 小学一年のガキがなにを言うか・・なのだが
今から思えば 放置されて育ったことで 大人ぶらざるを得ない
こまっしゃくれたガキになってしまっていたのだろう

自分以外の生徒が全員 幼く見えていたのは確かだった
・・でこの母親べったりだったヤツが中でもより幼く見え
思わず軽蔑の念が湧いていたのは間違いないだろう

しかも その後 この母親べったり野郎は
こともあろうに うんちをお漏らしになられたのであった

ちなみに この彼は その後 大学で医学を専攻 現在では
知る人ぞ知る名医となっている

子供は子供らしく 育てねば ならぬのだ・・

それは さておき 僕は 同じクラスに 人形のような
可愛い女の子がいるのを見つけていた

彼女はお母さんと来ていた

教室で担任の紹介も終わり 教科書も配られた
「先生さようなら みなさんさようなら」と挨拶の練習も終わり
あとは帰るだけ・・

教室を出ると 人形のような その子は
赤いランドセルを背負って お母さんと一緒に去って行く

赤いランドセルに引き寄せられるように 数歩ついて行った時
ランドセルが閉まっておらず パカパカと少女の歩数に合わせて
ヒラヒラしているのが見えた

今だと思い 駆け寄り 意を決して
「ランドセル あいてるよ。」
と言った

すると となりを歩いていた少女の母親が
「ボク ありがとう。
 小学校の裏にある養鶏所に居るから
 いつでも 遊びに来てね。」

「養鶏所・・?
 はい また おじゃまします・・」

それから 小学三年生までの 三年間 僕らは付き合った。

良く考えてみると これが 生まれて初めての ナンパだった・・



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