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介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる 連載第48回 「就業規則におけるメンタルヘルス②」

こんにちは。ラボ事務局の杉田です。
今週もラボ代表及川による「介護新聞」連載企画(第48回)をお届けしてまいります。
第48回のテーマは「就業規則におけるメンタルヘルス②」です。

心の健康管理は、職場の安全と直結する責任の一つです。
本記事では「増悪防止義務」というあまり聞き馴染みのない概念に焦点を当て、従業員のメンタルヘルスという課題に対し、事業主はどのような対応が必要なのかを解説します。これは、従業員と企業の両方にとって非常に重要であり、適切な対応が必要です。
実際の事例を用いて、事業者が取り組むべき具体的な対策や対応について明確に説明し、職場でのメンタルヘルス管理
の実践的なアプローチを探ります。前回に引き続き、今回も大切な知識をお届けしますので、ぜひ最後までお付き合いください。

介護福祉事業所の人事労務戦略室 ~次世代リーダーを育てる
連載第48回「就業規則におけるメンタルヘルス②」

 事業主が負う安全配慮義務には増悪防止義務もあります。定期健康診断等で高血圧を指摘され、それに由来する心疾患が確認され要治療の状態だったにも関わらず、当該職員は受診指示に従わず、拒否し続けた結果、その疾患により死亡した事例があります。

 裁判所は、「労働者が自身の健康を自分で管理し、必要であれば自ら医師の診断治療を受けることは当然であるが、使用者としては右のように労働者の健康管理をすべて労働者自身に任せ切りにするのではなく、雇用契約上の信義側に基づいて、労働者の健康管理のため安全配慮義務を負うというべきである」と示しています。

 入社直後から高血圧に罹患していて、心肥大を伴った高血圧は相当程度増悪していたことを、定期健康診断の結果により認識していたことから、「持続的な困難かつ精神的緊張を伴う過重な業務は病状の増悪に影響するので使用者は、当該労働者に対し、病状を増悪させ致命的な合併症が生じることがないように、持続的な精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにする、義務を軽減するなどの配慮をするべき義務があるというべきである」と判断。

 「このこと(前述の義務)は労働者から業務軽減の申出がされていないことによっても、何ら左右されるものではないというべきである。また、本件においては、医師による業務軽減の指示がされていないか、使用者が選任した産業医が使用者に対して業務軽減の指示をしなかったという点も、一審被告(会社)の前記業務軽減措置を採るべき義務の有無に消長を来すことはないというべきである」。(システムコンサルタント事件)

 つまり、事業者は本人の病状を把握し、本人の業務軽減希望がなかったとしても対応しなければならないのです。介護保険事業所の場合、利用者に対する安全配慮義務を当然担っています。前述したような状態を気づいて放置し、利用者への当該義務違反が発生した場合もリスクとして押さえておかなければなりません。

 受診命令に関する規定を設ける際には、次の点に留意しましょう。
① 合理的な要求:事業所が就労の可否判断の一要素として医師の診断を要求することは、労使間の信義則や公平の観点から合理的であるとされています。
② 職員の義務:職員は、事業所が指定する医師の診断を受ける義務があります。これに応じない場合、事業所は懲戒処分を含む適切な対応を取ることがあります。
③ 情報提供の同意:職員からの情報提供の同意を得るためには、事業所が情報を取得する目的を明確にし、職員に理解してもらうことが重要です。

 採用選考時にメンタルヘルスの問題を抱えている可能性がある方の罹患歴を確認することは、事業所にとって重要な側面です。これにより、事業所は新たに採用する職員が職務を遂行する上で必要な健康状態を有しているかを判断することができます。採用選考時のメンタルヘルスの罹患歴のポイントは次の通りです。
① プライバシーの尊重:メンタルヘルスの問題は非常にデリケートな個人情報であり、適切なプライバシー保護措置を講じる必要があります。
② 必要性と合理性:事業所は、採用選考時にメンタルヘルスの罹患歴を尋ねる際に、その必要性と合理性を考慮する必要があります。過去際限なく遡るのではなく、直近3年間の罹患歴を尋ねることが妥当であると考えられます。
③ 偽りの申告に対する対応:採用選考時に罹患歴を偽った場合、事業所は経歴詐称などを理由に普通解雇または懲戒解雇することが考えられます。このため、就業規則には採用選考時にメンタルヘルスに関する重要な情報を偽った場合の懲戒解雇事由を規定しておくことが望ましいです。

 そのほか、職員が病状を悪化させた場合の休職、職場復帰、配置転換などさまざまな規定があります。気になる点があれば、社会保険労務士などの専門家に確認することをお勧めします。

介護新聞2/9付「介護福祉事業所の人事労務戦略室―次世代リーダーを育てる!!」
http://wwu.phoenix-c.or.jp/~medim/kaigo/2024/202402kaigo/kaigo20240209.html

今週もご訪問いただきありがとうございました!
また次回、第49回の記事でお会いしましょう!

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