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宿直明けのお風呂

 私の勤務先が、突然、外部委託していた宿直を役付職員ですることになり、金曜日が私の当番になりました。

 それまでの勤務が平日の日勤帯だったので、ものすごく不安でした。

 でも、やるしかありません。

 ところが「案ずるより産むが易し」で、宿直の業務は思いの外スムーズにできました。

 ただ、週一回の宿直は五十路半ばの身にはこたえ、明けのお風呂が何よりの楽しみになりました。

 土曜日の朝、帰宅して乳白色の入浴剤が入った湯舟に「アァ~」と言って浸かり、ジャスミン系の香りに包まれながら一週間の出来事を千思万慮するのが常となりました。

 この習慣は、私にとって大きな転機となりました。

 それまでは、忙しさにかまけて日々の出来事を振り返ることはありませんでした。

 それが宿直明けは、開放感からか気持ちに余裕ができ、ゆったりとお湯に浸かりながら自省するようになりました。

 今、私が他人様からしてもらって「当たり前」に思っていることは何だろう。

 そう、あれだ。

 私は、率先して若い職員に笑顔で挨拶をするようにしました。

 すると、それは良い湯質のようにじわりじわりとシナジーを生みました。

 社内には以前にも増して笑顔と挨拶の輪が広がり、職場環境がさらに良くなりました。

 これは、毎回、宿直明けにお風呂を用意してくれた妻のお陰です。

 深く感謝しています。
                 <了>