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どうなる?日本の医療・年金制度 #1 - 日本の財政

はじめに

保険GO!では、あまりこういうマクロなお題については取り扱ったことがなかったのですが、年金や医療保険が将来どのようになるかを理解することは、死亡保険や医療保険を検討する上でも大切なことですので、日本の財政と医療・年金制度の行方を考えてみましょう。

日本の財政は結構終わっている

令和元年に、金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書に端を発した「老後2,000万円問題」により、必要な老後資金に注目が集まったことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。この老後資金2,000万円は、高齢夫婦の平均的な年金収入から、同世帯の平均的な支出を差し引いた結果の毎年の赤字額に、30年間の老後年数をかけた金額となっており、至極合理的な計算に基づく数字なのですが、当時その数字が一人歩きし、年金とそれを補う必要な貯蓄額について、国民に感情的な議論を巻き起こしました。

年金の原資となる日本の財政は、ここ20~30年少子高齢化と不景気により国民所得と税収は増えない一方、高齢化により年金と医療費が倍増し、これを補うために国債を乱発し続けるという自転車操業状態に陥っています。

社会保障費と国債の急増

以下のグラフは1970年から年金、医療やその他の社会保障費の推移を示していますが(厚生労働省 「社会保障費の推移」より作成)、1990年には50兆円に満たなかった社会保障費は、今では約130兆円の規模となっています。

社会保障費の推移

社会保障費は国民年金等の保険料と、国と都道府県の負担が財源となっていますが、経済低成長と労働人口の減少により年々保険料収入は横ばいで推移する一方、社会保障費の支出は上述の通り急増しており、これを補うために1990年以降国債を乱発し続けているのが日本の現状です。

以下のグラフは、同じ期間の国家予算の規模と国債の残高の推移を示したものになりますが(国家予算は「財務省財務統計(予算決算等データ)」より、国債残高は「国債発行額の推移(実績ベース)」より作成)、ご覧の通り社会保障費の急増により財政においても社会保障費への負担額が急増し、これを補うために国債がうなぎ登りに増加し、またこれらの国債への金利や返済費用に国家予算の4分の1以上を拠出しています。

国家予算と国債残高の推移

なお、日本の債務残高はGDPの2倍を優に超えていますが(2020年時点で2.56倍)、これはダントツ世界一の規模であり、次点のイタリアの1.55倍から大きくかけ離れた異次元の債務状況になっています。

大なり小なりの財政破綻は起こり得る

このような財政状況にも関わらず、今の日本には「開き直り財政破綻しない論者」が台等してきました。この論者は、ギリシャ等の財政破綻を経験した国と違い、日本国債の保有者は国内の金融機関や個人だから、国民にとって貸付であり、つまり国債が増加すると国民の資産が増えるだけなのであって問題ないといいます。確かに国債の90%以上が日銀や銀行やその他の国内の保有者であり、半分以上の債務を海外に頼っていたギリシャとは状況が異なります。しかし、財政や経済の専門家の間では、このままいけば大なり小なりの財政破綻は避けられず、大きな政治経済の転換を迫られるという説が有力です。

財政破綻には様々なシナリオが考えられますが、例えば、日銀が現在のマイナス金利を海外の利上げに対応して引き上げざるを得なくなり、その結果日本政府はこれまでの規模での国債の発行や借換えができなくなり大規模な財政緊縮を余儀なくされ、これにより日本の新規国債発行や償還能力に疑念を抱かれることになれば、国債の価格は暴落し日本は債務不履行に陥るかもしれません。また、さらに財政が悪化すると、金利の上昇を待つまでもなく、信用格付の低下やその他の要因から、日本の国債償還能力に疑念を持たれることは十分考えられ、これにより国債の価格が暴落し、新規国債発行が不可能となり債務不履行に陥るかもしれません。現に、現段階での日本の格付けは米国や中国や韓国よりも低く、先進国の中では決して高いものではありません。

最後に

経済低成長と労働人口の減少により、日本の財政は年金制度や医療制度をこのままの状態では維持できないところに来ており、遅かれ早かれ社会制度上の抜本的な改革が必要になると考えられます。次の記事では、これらの日本の財政状態を前提に、日本の年金制度の状況を見ていきたいと思います。