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「思いやりのバトン」をつなぐ ~ペイ・フォワードの精神

二十四節気:小暑 七十二候:鷹乃学を習う(末候)

菩薩は、お客様と楽しくコミュニケーションすることをこころがけてきました。ひとりのお客様のエピソードを通して、「思いやり」の効果を考えます。「思いやりのバトン」は、人から人へとつながります。


▶「思いやりスイッチ」はいつもオン

菩薩は28年前に生命保険業界に入りました。最初の15年はセールスの仕事です。生命保険の仕事は「病気」や「死」を扱います。テーマがテーマだけに、重い話になることもあります。それでも、私としては、お客様とはできるだけ楽しくコミュニケーションすることを心がけていました。重い話はしんどいですし、人というのは、そもそも楽しい話が好きですから。
 
なので、保険の契約をするしないにかかわらず、どうしたら目の前のお客様が喜んでくれるのかを、いつも考えていました。前回紹介した「思いやりスイッチ」は、いつもオンの状態を心がけていました。
 
「思いやりスイッチ」についてはこちらをお読みください。

今回は、あるお客様とのエピソードを紹介します。

▶極寒の青森で、山下達郎を熱く語る

佐藤さんは青森県にお住いの50代女性です。本で私のことを知り、連絡をくださいました。ご主人とご自身の生命保険について相談した結果、保険を見直すことになり、私は青森まで足を運びました(当時、保険の契約は必ず面談する必要がありました)。
 
青森を訪れたのは1月のこと。到着すると、ふだん見たことがないような「ドカ雪」です。佐藤さんとご主人は駅まで迎えにきてくださり、大雪をかきわけて、自宅に到着しました。佐藤さんとご主人、私の3人で、じっくりお話をさせていただき、無事に保険の契約ができました。
 
生命保険の商談では、保険がメインのテーマです(当たり前ですけど)。しかし、保険のことだけを話している訳ではありません。雑談もたくさんします。自分のことを知ってもらうために、私のほうから、趣味などをお話しすることもあります。
 
私が山下達郎さんの大ファンだと話をすると、佐藤さんも大好きということがわかりました。ただ、佐藤さんはCDで曲を聴くぐらいで、ライブには行ったことはないとのこと。ライブに参戦経験のある私は、ライブのよさを熱く語って、「ぜひ、行ってください」とすすめました(笑)
 
山下達郎さんに関して私が書いた記事はこちら。

 山下達郎さんオフィシャルサイトはこちら

▶日曜日、p.m.2:50

青森から戻って、「佐藤さんのために何かできないかな」とぼんやり思っていると、佐藤さんのお誕生日が近いことに気づきました。生命保険に加入するには、生年月日が必要です。当然、佐藤さんのお誕生日もわかります。ふつうであれば、お誕生日カードを書いて送るのですが、佐藤さんがもっと喜んでくれることはないかなと、考えをめぐらせました。
 
いいアイディアが浮かびました!
 
その日は日曜日。佐藤さんの誕生日です。
私は佐藤さんにショートメールを送ります。
「今日の14時から、FM青森を聴いてください」
 
山下達郎さんは、毎週日曜日14時から「サンデーソングブック」という番組のパーソナリティをしています。菩薩は毎週欠かさず聞いていて、ここ数年の放送は全部録音して、保存しています。
 
番組が終わりに近づきました。達郎さんが「お誕生日メッセージ」を読むコーナーです。そこで、達郎さんが「千葉県の山口哲生さんから、佐藤さんへハッピーバースデー」と、私の書いたハガキを読んでくれました。
 
番組終了後すぐに、佐藤さんから私にメッセージが届きました。
めちゃくちゃ感動してくれたようです。
 
その後、達郎さんが青森でコンサートをしたとき、佐藤さんはご主人といっしょに、「生達郎」を堪能されたようです。よかった。よかった(チケット取るのが本当に大変です。地方は競争率が少し低いかも)。

▶「思いやりのバトン」をつなぐ

「顧客満足」を越えて「絆」をつくるためには、「情緒的な体験」が必要、といわれます。「情緒的な体験」とは、心を強くゆさぶるような体験です。以前、取り上げたディズニーランドのエピソードにあったように、キャストが膝を立てて、踏み台になってくれたというような体験です。
 
「情緒的な体験」とは、特別なことと考えがちです。しかし、そこまで難しく考えることはありません。相手の喜びそうなことを考えて、ちょっと工夫をすれば、意外と簡単にできます。大事なことは「相手をおもいやる気持ち」。
 
私がやったことといえば、達郎さんの番組宛に、ハガキを一枚書いたことだけです。お金にすると、60円ぐらい。けれども、「60円+ハガキを書く手間+ハガキを投函する手間」でひとりの人を喜ばせることができました。佐藤さんが喜ぶことを考えて、少しアイディアを考えただけです。ちょっとしたことで、「一生ものの感動」を生み出すことは可能です(佐藤さんが「一生もの」と思ってくれたかどうかは不明ですが)。
 
ちょっと自慢みたいな話になりましたが、実をいうと、達郎さんにハガキを送るというアイディアは、私のオリジナルではありません。少し前に、わが家でこんなことがありました。
 
その日は日曜日。私の誕生日です。私は作業をしながら、達郎さんの番組を聞いています。そのとき娘が私に声をかけます。

「パパ、ラジオをちゃんと聞いて!」
 
なんと、達郎さんが私の名前を呼んでくれているではないですか!
 
娘が内緒でハガキを送ってくれていたんですね。私にとって、人生でいちばん嬉しい誕生日プレゼントでした。達郎さんが自分の名前を呼んでくれたのは、もちろん嬉しかったです。でも、もっと嬉しかったのは、娘が自分のことを思ってくれる気持ち、「思いやり」でした。
 
当時、娘は中学生。
優しい人に育ってくれて、ありがとう。
 
娘の「思いやり」が私に届き、私はその「思いやり」を佐藤さんに届けました。娘 → 私 → 佐藤さん と、「思いやり」のバトンがつながれました。こんな風に「思いやり」をつないで、この世界をもっともっと温かいものにしていければと思います。
 
この話を書きながら、むかし観た映画のことを思い出しました。「ペイ・フォワード」という映画です。自分が受けた善意や思いやりを、その相手に返すのではなく、別の人に渡すという考え方です。
 
歳を取ったいまになって思うと、ペイ・フォワードとは、子どもが親から受けたご恩を、他の人に返すことなのかなと思います。親から受けたご恩は大きすぎて、100%報いることはできません。それに、親は子供から見返りは期待していません。子としてできることは、自分のまわりの人に親切にすること。それをこれからも実行していきたいです。それが本当の親孝行ですね。

まあ、自分の場合は、こどもからも大きな親切をもらいました。幸せなことです。感謝。

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